特に50代を過ぎると、徐々に老後の資産管理が気になり始めるのではないでしょうか。また、資産を将来に備えて管理したいと思っても、高齢になるに従って体力や判断力が下がってきたり認知症になるリスクも発生します。
資産を適切に管理できるか、自分が希望する介護や医療、そして遺産相続ができるかなど、さまざまな問題が発生します。そんなときに有効活用できるのが、家族信託です。家族信託は、信頼できる家族に財産の管理を任せることのできるシステムです。
今回は、財産を管理する方法としてぜひ知っていただきたい家族信託について詳しくご紹介します。
さっそくみていきましょう。
いま注目されている!家族信託とは
家族信託とは、家族・親族に財産の管理を任せる財産管理の仕組みのことを言います。家族に財産を管理してもらうので、第三者に任せるよりも安心かつ低費用に管理してもらうことができます。
平成19年に改正信託法が施行されたことにより、高齢になっても財産や相続のための信託を利用しやすい仕組みづくりが整いました。この改正信託法により、財産の持ち主本人の体調の悪化や判断能力の低下・認知症に左右されずに財産の管理が可能な家族信託を行うことが可能になりました。
家族信託がよく活用される事例と使われる理由
ではなぜ、いま家族信託が注目を集めているのでしょうか。大きく分けて3つの理由があります。それぞれみていきましょう。
理由1:認知症対策として注目
まず一つ目が、認知症への対策として家族信託が注目されていることが挙げられます。認知症患者の数は増え続けており、将来的には5人に1人が認知症になるとも予測されています。
認知症になってしまうことで正常な判断ができなくなり、正しい財産管理、そして自分の希望する遺産相続を行うことがどうしても難しくなります。
しかし、家族信託を事前に行っておけば、万が一認知症になっても財産管理や遺産相続におけるトラブルやリスクを回避することができます。また、将来的にその財産を受け継ぐ人に家族信託を任せておけば、管理上のリスクもほとんどなく安心です。
このように、認知症対策の一貫として家族信託が注目されているのです。
理由2:任意後見人制度では限界があるため、家族信託を利用
家族信託と似た制度として、任意後見人制度があります。任意後見人制度も、家族などが財産管理などをできる制度ですが、以下のようなデメリットがありました。
- 手続きに時間がかかる
- 実際に機能し始めるのは判断能力の低下後
任意後見人制度の場合、利用し始めるタイミングが難しく、本人の判断能力がないと判断されて初めて利用がスタートします。一方、家族信託の場合、任意後見人制度よりも利用するハードルが低く、判断能力の低下前から機能開始が可能です。
理由3:財産が継承されるので相続も安心して行える
家族信託では、契約を結んだ直後から管理がスタートします。よって、認知機能に関係なく、契約したタイミングで資産運用を開始することができます。これによって、財産の持ち主本人も、自分自身が元気な状態で、資産運用の状況を知ることができます。
家族信託を利用する2つの事例
続いては、具体的にどのような場合に家族信託を利用することができるのかみていきましょう。
家族信託を使う事例1:認知症への対応
さきほども述べましたが、認知症対策として家族信託を利用するケースが増えています。
万が一認知症を患った場合にも、しっかりと財産が管理され、将来的に相続人の間でトラブルが発生しないために家族信託が利用されます。
家族信託を使う事例2: 障害児への対応
2つ目は、子供に障害があるケースです、両親の死後、子供が金銭的に困ることがないように家族信託が利用されることがあります。
親が生きている間に、信頼できる親戚に受託者となってもらい、障害のあるお子さんを受益者にして、家族信託を設定します。そうすることで、将来的にも障害を持った子供が金銭・住居面においても安心して暮らすことができます。
また、将来的に障害を持った子供を世話する側の人(受託者)も、一緒に暮らすか・施設に入れるかなどを選択することが可能です。委託者の意志だけでなく、受託者の意志も踏まえて承継財産の運用をすることができます。
家族信託のメリット・デメリット
では、家族信託のメリットとデメリットをみていきます。
家族信託のメリット:判断能力に関係なく適切な財産管理ができる
相続財産が発生してから相続人が財産管理を初めて行う場合、まずは財産の把握から始まりとても面倒なことになる場合が少なくありません。また、相続財産に対して支払う相続税の支払いは、キャッシュで期限内に支払う必要があります。
このように、相続財産発生後から財産管理を行うと、とても大変かつスピーディに行わないなければなりません。しかし、家族信託の場合、将来的に財産を相続する相続人が財産を管理することになるので、相続発生後も管理がとてもスムーズです。
また、財産の持ち主自身も、自身の判断能力に関係なくその時に合った最適な財産管理を行ってもらえるというメリットがあります。状況を踏まえた適切な財産管理が可能となります。
自分自身で財産の管理を行わないことで、オレオレ詐欺やリフォーム詐欺といったトラブルに合うリスクも低減します。
家族信託のデメリット:できないこともある・節税効果もそれほど高くない
メリットの多い家族信託ですが、実はデメリットもあります。必ずしもすべての管理を行えるとは限りません。成年後見人や遺言を使わなくてはできないこともあり、特に身上監護や財産管理に関してはできない部分もあります。
また、節税効果が期待できないこともデメリットと言えます。相続税を将来的に節税したいという場合には、家族信託でなく生前贈与などの対策を行ったほうが節税においてはメリットが大きいでしょう。
まとめ
いかがでしたか?今回は、ここ最近注目されている家族信託について詳しくみていきました。
家族信託には多くのメリットがありますが、節税効果が高くない点においては注意が必要です。しかし障害を持った子供の財産管理を託すことができるなど、大きな利点があります。
家族信託を行うことで、将来的な財産管理のリスクを低減させることができ、特に認知症対策としても効果的です。特に相続は、相続が発生する前々から相続対策を行っておくことが大切です。事前に準備をしておくことで、相続発生後のトラブルを防止したり節税することができます。
家族信託も早いうちから行っておくことで、リスクの低減につながります。分からないことなどがあれば、ぜひ相続専門の税理士に相談してみると良いでしょう。