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高齢化が進む現代社会では、「老老相続」と呼ばれる新しい問題が大きな関心を集めています。老老相続とは、高齢の親から高齢の子へ財産が引き継がれる相続のことです。

老老相続では、相続手続きが複雑だったり、家族に大きな負担がかかったりなど、様々な問題が起きています。そこで本記事では、老老相続とは何か、なぜ増えているのかについて整理したうえで、どのような問題があり、どうすれば解決できるのかをわかりやすく解説します。

ますます増加する老老相続とは

近年、日本社会の高齢化が進み、「老老相続」と呼ばれる、相続する側もされる側も高齢者という状況が深刻化しています。この現象は、単なる数字の増加にとどまらず、少子高齢化、核家族化、そして平均寿命の延びといった社会構造の変化と深く結びついています。

では、なぜ今、老老相続がこれほど深刻化しているのでしょうか? その背景には、日本の社会構造の変化が大きく影響しています。

日本社会の高齢化

老老相続が増加している背景

老老相続が増加している背景には、主に以下の要因があると考えられています。

  • 少子高齢化の加速・・・日本社会の高齢化はますます進み、高齢者の割合が年々増加しています。また、少子化との組み合わせにより、労働人口の減少や社会保障制度への負担増といった問題も深刻化しています。
  • 核家族化の進行・・・核家族化が進み、親族が近くに暮らすことが少なくなり、相続手続きをサポートしてくれる人が身近にいないケースも増えています。地域社会のつながりが希薄になることで、相続に関する情報やサポートを得にくい状況も生まれています。
  • 平均寿命の延び・・・医療の発達により、平均寿命が延びています。しかし、健康寿命とのギャップが拡大しており、高齢者が長生きする一方で、介護が必要な期間も長くなる傾向にあります。

少子高齢化

老老相続が増加している理由

老老相続が増加している背景には、社会構造の変化に加えて、以下に挙げる個人の状況や意識の変化も大きく影響しています。

  • 相続に関する知識の不足・・・高齢者の中には、相続に関する知識が不足している人が多く、手続きが複雑で煩わしいと感じる傾向があります。
  • 相続財産の複雑化・・・不動産だけでなく、金融資産や事業資産など、相続財産が複雑化する傾向にあります。
  • 遠隔地での相続・・・子どもが遠方に住んでいる場合、相続手続きが遅延する可能性があります。
  • 認知症などの疾患・・・高齢者は認知症などの疾患にかかるリスクが高いため、意思決定能力が低下し、相続手続きが困難になるケースがあります。
  • 経済的な問題・・・老後資金の不足や、経済的な不安から、相続手続きを後回しにする傾向が多く見られます。

このように、老老相続が増加している背景には、社会構造の変化や個人の状況など、様々な要因が複雑に絡み合っています。

老老相続の問題点と解決方法

老老相続になると、具体的にどのような問題が生じるのでしょうか?

老老相続の主な問題点

老老相続の場合、一般的な相続と比べ、以下の問題が生じる可能性が高くなります。

  • 高齢者の手続き負担
  • 判断能力の低下によるトラブル
  • 次世代への相続の遅れによる財産分散

高齢者の相続に関する知識が不足

高齢者の手続き負担

相続に関する手続きは複雑であり、勧めるためには多くの書類が必要です。例えば、戸籍謄本や固定資産の評価証明書など、相続に関する手続きを行うためには、多岐にわたる書類を準備しなければなりません。これらを揃えるためには、役所や金融機関などを訪問しなければなりませんが、高齢者にとっては体力的にも心理的にも負担が大きく、容易なことではありません。

また、高齢者は手続きに不慣れであることから、書類に不備があるまま提出するケースも少なくありません。そのため、さらに時間がかかり、家族全体のストレスを増大させてしまいます。

判断能力の低下によるトラブル

高齢者の中には、認知機能の低下によって、自身の意思決定が困難になるケースがあります。こうした状況では、遺産分割協議を作成する際に家族間で意見が一致しにくくなるため、トラブルに発展しやすくなります。

また、遺産の分割方法を巡り、相続人同士が対立しやすくなるため、訴訟にも繋がりかねません。

次世代への相続の遅れによる財産分散

被相続人となる予定の人物(親など)が高齢化するにしたがい、次の相続が発生するまでの期間が長くなります。その間に亡くなる相続人なども出てくることから、相続人に変わって子などが相続する「代襲相続」となる可能性が高くなります。たとえば、1人の相続人が亡くなり、その子供が3人であれば、代襲相続人は3人です。つまり、次の相続までの期間が長くなるほど、相続人の数は増え、その結果、財産が分散してしまうのです。

財産が細分化すると、修繕費や固定資産税の支払い分担が曖昧になりやすいため、家族間の関係が悪化する恐れがあります。また、財産を複数の相続人が共有する場合、賃貸物件として利用するにしても、売却するにしても、意見がまとめにくくなるため、意思決定までに時間がかかってしまいます。

老老相続の解決方法

老老相続の問題を解決するためには、いくつかの方法があります。その中でも、特に効果的なものが、以下の3つです。

  • 遺言書の作成と定期的な見直し
  • 生前贈与の利用
  • 専門家への相談

遺言書の作成

遺言書の作成と定期的な見直し

遺言書は、相続を円滑に進めるために欠かせない手段です。遺言書を作成しておけば、本人の意思が尊重できるだけでなく、相続人同士の争を防ぐこともできます。

ただし、時間の経過とともに、遺言書の内容が状況にそぐわなくなることもあるため、定期的に見直しを行うことが大切です。また、家族間で事前に遺言書の存在を共有しておけば、遺言書の紛失を防ぐことができます。

生前贈与の利用

生前贈与を積極的に利用すると、相続時の財産分割をスムーズに進められます。贈与税には年間110万円の非課税枠があるため、この枠を活用することで、計画的に資産を次世代に移転することが可能です。また、教育資金の贈与に関する非課税制度を利用すれば、祖父母から孫への教育費として最大1,500万円まで非課税とすることができます。

このように、生前贈与を活用すれば、相続税の負担を軽減しつつ、次世代の人達が財産を早期に活用する道が開けます。実施する際には贈与の目的やタイミングを慎重に計画するとともに、税務上の問題が発生しないように、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

専門家への相談

老老相続に関する問題を解決するためには、税理士や弁護士などの専門家への相談は欠かせません。専門家であれば、専門知識を屈指して、状況に合わせた最適な解決方法を提示することができます。

例えば、税理士に相続税の相談をしておけば、トラブルを起こすことなく相続税の節税することが期待できます。また、弁護士に相談すれば、法的に有効な遺言書を作成し、後のトラブルを未然に防ぐことが可能です。

したがって、老老相続の問題が起こりそうな場合は、専門家に早めに相談することをお勧めします。そうすれば、相続の準備が計画的かつ効率的に進むため、家族全体の負担を軽減することができるでしょう。

まとめ

老老相続は、高齢化社会の進む日本では、避けて通れない問題です。老老相続になれば、相続の手続きが複雑になってしまったり、家族関係に悪影響を与えてしまったりしかねません。

老老相続に関する諸問題を解決するためには、法律などの専門的な知識が必要です。そのため、税理士や弁護士などの専門家に早い段階から相談しておくと良いでしょう。専門家の力を借りて、計画的に準備を進めて行けば、大切な財産を次世代に無駄なく引き継ぐことが可能です。安心して相続に備えるために、ぜひ早めの準備を心がけましょう。