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「相続」というとプラスの財産(資産)を受け継ぐイメージがありますが、その他にも借金などのマイナスの財産(債務)を受け継がなければならないケースもあります。

中でも、被相続人が生前に連帯保証人になっていたような場合、その事実が家族には直ぐに分からないことも多く、相続人が債権者から債務返済の催告通知を受けて初めて判明するといったことが少なくありません。

今回は、そのような「故人が連帯保証人であった場合の相続との関係性」について解説します。

連帯保証人の責任は相続されるの?

「連帯保証人」という言葉はよく聞かれると思いますが、連帯保証人の相続を理解するためには、そもそも被相続人が連帯保証人となる法律行為(契約)が何であるかをまずは知っておく必要があります。

連帯保証人における保証債務とは

他の者が負っている債務(例えば、借金など)をその者が返済しない(又はできない)場合に、その債務を肩代わりして返済する義務を負う者のことを「(連帯)保証人」、そしてその義務のことを「保証債務」といいます。

つまり、連帯保証人が負っている責任とは、主たる債務者が債務を履行しない場合に、その債務を主たる債務者に代わって履行(弁済)する義務であって、債権者との契約によって生じた保証債務であるといえます。

連帯保証人の保証債務は継承される

では、連帯保証人が亡くなった場合、その保証債務は相続人に相続されるのでしょうか。

「相続」は、被相続人の死亡によって被相続人が保有するすべての財産・債務を相続人に包括的に継承することとされています。

保証債務は被相続人が直接負っていた債務ではありませんが、間接的にでも負っていた債務であることには変わりがありませんので、保証債務も相続人に相続されます。

従って相続人は、債権者から被相続人が負っていた債務について返済催告を受けた場合、基本的には(相続人が複数いる場合は相続分に応じて)返済しなければなりません。
連帯保証人と相続の関係

被相続人が連帯保証人であることが判明したときのケース別対処法

このように、連帯保証人の責任(保証債務)は、何もしなければ相続人に相続されることになります。

では、もし被相続人が連帯保証人であることが分かったら、相続人はどうすれば良いのでしょうか。連帯保証人の保証債務における対処法は、相続する財産がプラスになるかマイナスになるかによって異なります。

保証債務も含めて相続財産の金額がマイナスになる場合

被相続人が連帯保証人になっていた場合、まず確認するべきことは保証債務も含めて相続財産の金額がマイナスになるかどうかということです。

被相続人が生前保有していたプラスの財産(資産)とマイナスの財産(債務)のいずれも常に相続人はすべて相続しなければならないとすると、相続人が著しく不利な状況に陥ってしまう場合も考えられます。

そこで、民法では相続人の権利を保護するために、被相続人のプラス・マイナスすべての財産を相続することを放棄する、「相続放棄」という手段を用意し、相続人が自由に選択できるようにしています。

相続する全体の財産がマイナスに傾いている場合、相続放棄をすることで連帯保証人の保証債務も放棄することが賢明です。

相続放棄を行う場合、相続放棄をする相続人は相続の開始があったことを知った時(通常は被相続人が亡くなられた日)から3か月以内に家庭裁判所に対して相続放棄を申し立てる必要がありますので、法定期間内に必要な手続きを行うようにしましょう。

保証債務を含めても相続財産の金額がプラスになる場合

反対に、保証債務によって将来債権者から返済を求められ可能性のある金額を含めた債務の額とほかマイナス財産とプラス財産を比較した場合に、プラスの財産の方が多くなる場合もあります。

プラス財産の方が上回る場合、遺産の分割方法には多少工夫・配慮が必要かもしれませんが、一般的には保証債務も含めて相続された方が得策です。

また、以下のような場合には例外として債務義務を一部控除してもらうことができます。

  1. 主たる債務者が債務超過の状態が相当期間継続しているなどの弁済不能の状態にあり、保証人が主たる債務者に代わって債務を弁済しなければならない場合
  2. かつ

  3. 主たる債務者に対して保証人が弁済した金額を求償しても返還を受ける見込みがない場合

プラスの財産が上回る場合は、債務義務が一部控除される可能性も含めて相続をすることを一度考えてみると良いでしょう。

相続開始から3か月以上経過した後に保証人であることが判明した場合

とはいうものの、実際には相続開始から3か月以上経過した後に被相続人が連帯保証人であったことが判明するようなケースもよくあります。

相続放棄は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行うことが法律で定められています。よって、原則的にはその期間(熟慮期間)を過ぎてからの相続放棄の申し立ては認められません。

しかし、熟慮期間中に被相続人が連帯保証人であったことが分かっていれば、当然相続放棄を行っていたであろうと考えられる場合など、状況によっては相続放棄が認められるケースもあります。相続放棄を行いたい場合には、弁護士に相談して対処方法に関するアドバイスを受けるようにしましょう。

但し、相続人間で既に遺産分割協議が終了し、被相続人から相続した財産(例えば、預貯金など)の一部でも費消・処分してしまっている場合は、相続人は相続を(単純)承認したものとみなされ、その後の相続放棄は困難とされていますので、その点には十分ご注意下さい。
連帯保証人の保証債務j

その他の保証債務と相続の関係

ここまで連帯保証人の保証債務と相続の関係について詳しくみてきました。

連帯保証人以外にも、保証債務にはいくつかの種類があります。連帯債務や身元保証といった保証債務は相続されるのでしょうか。

連帯債務と相続の関係

「連帯保証人」あるいは「保証債務」と似たような言葉で「連帯債務」というものがあります。

連帯債務とは、同一の債務について、複数の債務者が各自独立してその全部を弁済する義務を負い、そのうちの一人が債務を履行すれば債務が消滅する(他の債務者も債務を免れる)ものをいいます。

各債務者の債務は独立していて、相互に主従関係がない点で前述の保証債務とは異なります。各債務者は直接債務を負っている当事者であって、債務者間で相互に(連帯)保証するという関係にはありませんので、ここで話題にしている連帯保証人とは異なることに注意して下さい。

例えば、夫婦共有でマイホームを購入する際、夫婦二人で住宅ローンを組むことがありますが、その場合によく使われるのがこの連帯債務です。

この連帯債務も連帯債務者が亡くなった場合は、保証債務と同様にその義務は相続人に相続されます。

身元保証は相続されない

また、同じ保証人でも「身元保証人」というものがあります。ある人が会社に就職する、あるいは不動産を賃借するといった場合に保証人を求められたりすることがありますが、それが身元保証人です。

身元保証も保証債務の一つであることに変わりはありませんが、身元保証は身元を保証されている者と保証している者との特別な血縁関係や信頼関係によって成り立つものです。

ですので、仮に被相続人が生前誰かの身元保証人になっていたとしても、それは被相続人であったから成立していたのであって、被相続人固有の一身専属権に該当すると考えられるため、身元保証人の地位(責任)は相続人には相続されないものと考えられています。
連帯保証以外の保証債務

まとめ

被相続人が連帯保証人であることは、相続放棄を行うか否かをはじめ、その後の相続人の判断や手続きに重要な影響を及ぼします。

そのため、まずは被相続人の財産・債務の調査をしっかり行うことが大切です。できれば相続が発生する前に連帯保証人の保証債務の有無について調査しておくと良いでしょう。

金銭消費貸借契約書や保証契約書などの書類を探すことはもちろんですが、被相続人が生前こまめに記録を残すような方であれば手帳や日記帳、PC・スマートフォンのファイルなどもひと通り調べて、どこかにその記録や形跡が残っていないかを確認してみましょう。

また、限られた時間の中では専門家(弁護士・司法書士・税理士など)に任せることも選択肢の一つです。特に複雑な相続事案や法定期限を過ぎてから手続きを行うような場合には、専門家に相談・依頼することをお勧めします。