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NISAやiDeCoの普及によって、資産運用を始める人が大幅に増えています。それに伴い株式を相続する人も増えていますが、問題なのは有価証券の相続手続きです。なぜなら、亡くなった方の取引口座を調べ、必要書類をすべて揃えたうえで手続きをするには、多くの手間や時間が必要となるからです。

こうした課題を解決するために、金融大手各社は、手続きの一元化に向けた新たな試みを進めています。この記事では、従来の手続きの問題点から新制度の概要、メリット・注意点や今すぐできる対策などについて解説します。

相続した有価証券の手続きはなぜ大変なのか?

有価証券

相続した有価証券の手続きは、想像以上に大変になるケースが多いです。その理由は、主に以下の2つです。

金融機関ごとに個別の手続きを行わなければならない

有価証券を購入するためには、証券会社なら証券会社の、銀行なら銀行の取引口座を開設しなければなりません。したがって、亡くなった方が複数の口座で有価証券の取引をしていた場合、金融機関ごとに個別の相続手続きを行わなければなりません。

そのためには1社ずつ連絡を取り、それぞれに必要となる書類を準備したうえで、手続きを進めていかなければなりません。また、金融機関の窓口への問い合わせや訪問は、基本的に平日の営業時間のみのため、相続人が会社員などの場合は、スムーズに進めるのが難しくなります。

必要書類が多く取得も煩雑である

有価証券の相続手続きでは、多くの場合、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要となります。戸籍は、結婚や転籍、法改正などによって作り変えられるため、古い戸籍(改製原戸籍)や、転籍などによって除かれた戸籍(除籍謄本)も含め、遡ってすべてを揃えなければなりません。

それ以外にも、遺産分割協議書を作成したうえで、必要に応じて相続人の戸籍抄本や印鑑証明なども揃える必要があります。また、これらの書類は、金融機関ごとに原本(もしくはコピー)の提出が求められるため、書類を取得したりコピーしたりする手間を繰り返すことになります。

さらに、書類に不備があれば、追加書類の取得や再提出が必要になることもあります。こうした書類の多さや手続きの煩雑さに、負担を感じる方も少なくありません。

金融機関の相続手続き一元化とは

金融機関の相続手続き一元化

相続手続きの負担を軽減するため、金融機関では手続きをまとめて進められる新たな取り組みが進められています。ここでは、その概要や対象について解説します。

みらいたすくの背景と概要

上述のように、有価証券の相続手続きでは、同じ戸籍謄本や遺産分割協議書などを金融機関ごとに提出しなければならず、相続人にとって大きな負担となっていました。また、故人がどの金融機関に口座を持っていたかを確認するだけでも、多くの時間や手間がかかるケースが少なくありませんでした。

こうした課題を解決するため、金融機関が共同で導入を進めているのが、有価証券の相続手続きを効率化するための共通サービス「みらいたすく」です。

みらいたすくでは、相続人が戸籍謄本などの必要書類を一度提出すれば、参加している金融機関でその情報を共有できるようになります。また、故人が口座を保有していた金融機関も確認しやすくなるため、一社ずつ問い合わせる手間の軽減も期待されています。

2028年秋開始予定の内容と対象

みらいたすくは、2028年秋頃のサービス開始を目指して準備が進められています。みらいたすくがスタートすれば、相続人が一度提出した戸籍謄本などの必要書類を参加金融機関間で共有できるようになり、金融機関ごとに同じ書類を何度も提出する負担が軽減される予定です。

また、参加金融機関における口座の保有状況を確認しやすくなるため、相続人が一社ずつ問い合わせる手間も少なくなると期待されています。

ただし、この制度の利用対象となるのは、参加金融機関での手続きに限られる予定です。また、すべての相続手続きが完全にオンライン化されるわけではなく、手続きの内容によっては追加書類や個別対応が必要になる場合もあります。

制度の詳細については、開始時期が近づくにつれて順次公表される見込みです。

一元化によって期待されるメリットと注意点

金融機関の相続手続きの一元化によって、相続人の負担軽減が期待される一方、利用にあたっては知っておきたい注意点もあります。ここでは、今後期待されるメリットと注意点について解説します。

新制度の主なメリット

金融機関の相続手続きが一元化されれば、相続人の負担は大きく軽減されることが期待できます。例えば、戸籍謄本などの必要書類を金融機関ごとに何度も提出する手間が減るため、書類の準備や郵送にかかる時間や労力を抑えられるようになります。

また、亡くなった方が口座を保有していた金融機関を確認しやすくなるため、一社ずつ問い合わせる負担も軽減されるでしょう。さらに、必要書類や口座情報を参加金融機関で共有できるようになれば、手続き全体がスムーズに進みやすくなります。

仕事や家事などで忙しい相続人にとって、こうした負担の軽減は、大きなメリットと言えるでしょう。

新制度の注意点と対象範囲

一方で、制度を利用する際にはいくつか注意点もあります。まず、みらいたすくの対象となるのは、参加金融機関での手続きに限られます。そのため、亡くなった方が生前に利用していた金融機関がみらいたすくに参加していない場合は、従来どおり個別に相続手続きを行わなければなりません。

また、一元化によってすべての相続手続きが自動化されるわけではないため、相続の内容によっては追加書類の提出や個別の確認が必要になる場合もあります。さらに、対象は参加金融機関で管理されている上場株式や投資信託などが中心となる見込みであり、一般的な中小企業などの非上場株式に関しては、別途、従来どおりの手続きを行わなければなりません。

今のうちにできる有価証券の相続対策

有価証券の相続対策

新制度の開始を待つだけでなく、今のうちから相続に備えておくことも大切です。ここでは、生前に取り組める主な対策を紹介します。

生前からの証券口座整理と情報共有

有価証券の相続では、故人がどの金融機関に口座を持っていたのか分からず、相続人が口座を探すことから始めなければならないケースも少なくありません。そのため、生前のうちに利用している証券会社や銀行を整理し、証券口座の有無や保有資産の概要を家族に伝えておくことが大切です。

また、住所変更や氏名変更などの届出が済んでいるか確認しておくことも、相続時の手続きをスムーズに進めることにつながります。ただし、ログインIDやパスワードなどの重要な情報に関しては、トラブルを避けるためにも、安易に共有するのではなく安全な方法で管理しておきましょう。

遺言・信託の活用とポートフォリオの見直し

有価証券は現金とは異なり、銘柄ごとに価値が変動するため、相続人の間で分け方が問題になることがあります。こうしたトラブルを防ぐためには、誰にどの資産を引き継ぐのかを遺言書で明確にしておくことが有効です。また、資産の管理や承継方法によっては、家族信託などの活用を検討することも選択肢の一つとなります。

あわせて、保有している有価証券の内容を定期的に見直し、自身の資産状況や家族構成に合った資産配分になっているか確認しておくことも、将来の相続に備えるうえで役立ちます。

まとめ

2028年秋開始予定の「みらいたすく」が導入されれば、有価証券の相続手続きはこれまでよりも効率化され、相続人の負担軽減が期待されます。ただし、この制度の対象は参加金融機関で管理されている有価証券であり、一般的な中小企業などの非上場株式は基本的に対象外です。

そのため、みらいたすくの導入後も、非上場株式については従来どおり名義変更などの手続きを行う必要があります。また、相続税の申告にあたっては、株式の相続税評価額を算定しなければなりませんが、非上場株式は上場株式に比べて評価方法が複雑になるケースも少なくありません。

相続財産に非上場株式が含まれている場合は、手続きだけでなく相続税評価額の算定についても専門的な判断が求められることがあります。状況に応じた適切な対応を進めるためにも、必要に応じて税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。