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相続税対策として、養子縁組が効果的だと聞いたことがあるでしょうか?相続税の節税について調べてい際に、養子縁組について小耳に挟んだことがあるかもしれません。

実際、養子縁組は相続税の節税になりますが、注意も必要です。養子を持つということは、法律的な親子関係を結ぶということです。相続税の対策に養子縁組を使う場合、事前にトラブルについても想定し、慎重に行うことが重要です。

具体的にはどのようなトラブルがあり、どう対策を取れば良いのでしょうか?

今回は、相続税対策で養子縁組を行う場合によくあるトラブルやトラブルへの対策について詳しくみていきましょう。

養子縁組とは?

まずは養子縁組についてしっかりと理解しましょう。親子関係は、本来、産んだ親と産まれた子供の間に存在するものです。しかし養子縁組とは、血縁関係のない親子の間であっても、法律的な親子関係を結ぶというものです。

養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類が存在します。

普通養子縁組とは?

まず最初に、普通養子縁組とは、養子が実親と養親両方と親子関係を持つ縁組のことをいいます。普通養子縁組を組むことができるのは、基本的には養子が成人である必要があります。また、養子が15歳未満の場合は、養子縁組を組む際に実親の承諾が必要です。

普通養子縁組と相続の関係

普通養子の場合、相続において「法定相続人」の数に含むことができます。詳しくは後述しますが、法定相続人の数が多いほど、相続税が節税できます。しかし、被相続人に実子が何人いるかによって、普通養子を法定相続人の数に含んで良い人数が決まっています。

普通養子を法定相続人に含むことのできる最大人数は決まっているので、普通養子を組めば組むほど節税につながるということはありません。

特別養子縁組とは?

反対に特別養子縁組は、実親との親子関係は解消し養親とのみ親子関係を持つ縁組のことをいいます。特別養子縁組は、基本的に養子が6歳未満でないと組む事ができません。また、特別養子縁組を組む場合、家庭裁判所の審判を受けて初めて成立します。

特別養子縁組と相続の関係

普通養子縁組の場合、養子縁組は当事者同士の合意と届け出によって成立しますが、特別養子縁組の場合は裁判所の許可が必要となります。

特別養子縁組の場合、相続においては実子と同様の扱いとなります。よって、普通養子縁組と異なり、法定相続人の人数制限の対象からは外れます。

養子と相続税の関係

どうして養子縁組は相続税対策になるの?

養子縁組と相続税対策について確認するために、まずは相続税の基礎控除の計算式をみてみましょう。

相続税の基礎控除の計算方法は以下の通りです。

3000万円+600万円 × 法定相続人の数

つまり、法定相続人が増えるほど、節税につながります。

ここから考えると、法定相続人の数を増やすほど節税につながります。ただし、前述したように、普通養子縁組の場合、法定相続人に含むことのできる養子の数は、実子の数によって決まっています。

普通養子縁組を法定相続人に含む数ことのできる数は以下のように決まっています。

  • 実子がいる場合、1人
  • 実子がいない場合、2人

明らかな節税目的の場合、法定相続人に含めないことも

また、明らかに相続税の節税目的で養子縁組を実施していると判断された場合、養子縁組が認められない場合もあります。特別養子縁組の場合、法定相続人に含む人数に制限はありません。

ただし、特別養子縁組を組むためには、家庭裁判所の許可が必要となります。あくまで親子関係を継ぐ理由が前提としてある必要があります。

養子トラブルの家庭裁判所

養子縁組でよくあるトラブルと対策4選

続いて、養子縁組を行った際によくあるトラブルをみていきましょう。

養子縁組トラブル1:相続税の申告が否認される

さきほども少し触れたように、養子縁組は、相続税の節税目的であると判断された場合、申告が否認される場合があります。

また、相続税の申告の際にも、税務調査が発生するケースがあります。例えば「なぜ養子縁組したのですか?」と聞かれた場合に、「節税のためです」と答えるのはNGなので注意しましょう。

養子縁組を組む際には、しかるべき理由が必要です。養子縁組の第一目的が明らかに節税目的と判断されると、否認の対象となってしまいます。これはよく指摘される事項なので、気をつけましょう。

養子縁組トラブル2:実子の理解が得られない

また、養子縁組を組むことに対して、実子の理解を得られないケースもよくあります。実子と養子の間でトラブルが起こるケースです。これは、養子縁組を行うことに対して、実子に話を良く通していなかった場合よくあるトラブルです。

養子縁組を行う場合、養子縁組を行う理由・メリットについて実子にしっかりと話しておくようにしましょう。また、実子にとっては養子の存在が発生することで、自分の相続の取り分が減ることになります。

相続取り分が減ることが問題となり、遺産の分割がまとまらず裁判となるケースもあるので、養子縁組を組む前にトラブルを回避できるようにしておきましょう。

養子縁組トラブル3:養子にはマイナスの財産も発生する

養子側の義務として、実子と同様に養親への扶養義務が発生します。養子側は、相続のプラス財産だけでなく、借金や扶養義務といったいわゆるマイナス財産も発生します。特に、養子側には実の両親と養親両方に対して扶養義務が発生します。

財産をもらうだけもらって、あとは知らない、ということはできません。よって、養子縁組を行う前に養子側の状況を考慮して養子縁組を行うことが重要です。例えば養子側がプラスの財産はもらうけれど、扶養義務は放棄したいという場合、実子との間にトラブルが発生します。

よって、養子側が財産についてしっかり理解しておくことも重要です。

養子縁組トラブル4:養子縁組は簡単に解消できない

養子縁組は、簡単に解消することができません。簡単に投げ出すことができないので、慎重に慎重を重ねて、検討する必要があります。

養子縁組を解消するためには、まずは養子側と養親側の同意が必要です。普通養子の場合、両者が同意していれば「養子離縁届」を提出することで解消できますが、どちらか一方が同意していない場合には家庭裁判所での調停が必要になります。

また、特別養子縁組の場合には、解消する場合必ず家庭裁判所での調停が必要となります。養子縁組の離縁の必要である明確な理由があると判断されて初めて解消することができるのです。

よって、普通養子縁組・特別養子縁組問わず、一度養子縁組を組むと、簡単に解消することはできないことを理解しておきましょう。

養子縁組解消の裁判

まとめ

養子縁組と節税の関係、よくあるトラブルについて詳しくみていきました。養子縁組を組むためには、養子縁組を組みたいと希望する親と子の双方の同意が必要です。また、養子が未成年の場合は家庭裁判所の許可が必要となります。

相続税の節税について考えると、メリットが大きい養子縁組ですが、その分責任も大きいことを理解しておきましょう。また、実子の相続取り分が減ること、養子に扶養義務が発生することも考慮し、最終的に養子縁組を組んだ際のメリットとデメリットどちらが多いかしっかり判断することが大切です。

安易な養子縁組は、トラブルになる場合も少なくないので、慎重に行うようにしましょう。解消するのもまた裁判所の許可が必要となります。親子関係になるということは家族間の義務と権利が増えるということでもあるので、家族の同意も必要です。今回の対策を読んで、事前にしっかり準備してから養子縁組することが大切です。