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亡くなったご家族が受給していた年金は、相続することができるのでしょうか?実は年金は相続されるものと相続されないものの二種類に分かれています。

遺族に支給される年金にはいくつかの種類がありますが、それらを受給するためには届出書を提出する必要があります。また万が一届け出を怠った場合には、年金の不正受給になりかねないので、要注意です。

今回は、年金の受給に関する相続の問題と届け出の手続き方法、また遺族に支払われる年金などの基礎知識について解説していきます。

年金の支給権利は相続される?

年金は、国民年金や企業年金、個人年金保険契約に基づく年金などいくつかの種類に分かれています。

それぞれに支給の趣旨や契約内容が異なるため、相続財産に含まれる年金と含まれないものに分かれています。

相続財産に含まれない年金

厚生年金や国民年金などを受給していた人が死亡した場合、遺族の方に対して各種の「遺族年金」が支給されます。

遺族年金は残された遺族の生活を支えるために支払われるものであるため、これらは亡くなった方の財産とは関係がなく、そのためこの遺族年金は相続財産に含まれることはありません。

相続財産に含まれる年金

相続財産に含まれる年金にはさまざまな種類がありますが、主なケースは以下の二つです。

年金が退職金として遺族に支払われた場合

ご家族が在職中に事故や病気などで死亡したため、会社の規定により会社が委託していた生命保険会社等から遺族の方へ、死亡退職金が年金方式で支払われる場合です。

この場合、形式的には年金ですが実質的には退職金であるため、亡くなった方の退職金として相続財産に含まれます。

個人年金を遺族が受給する場合

亡くなった方が被保険者となり個人年金保険に加入し、満期後年金を受け取っていたケースです。年金支払保証期間内にご本人が死亡したために、遺族が残りの期間について年金を受け取ることになった場合、受給予定の年金は相続財産に含まれます。

年金と相続の関係

未支給年金は相続されるのか?

未支給年金とは

亡くなった方が死亡するまでに受け取っていない年金を「未支給年金(みしきゅうねんきん)」といいます。

年金は年に6回、2か月分をまとめて偶数月に後払いで支給されています。具体的には以下のようになっています。

  • 2月に受給する年金・・・前年の12月・今年の1月分の年金
  • 4月に受給する年金・・・2・3月分の年金
  • 6月に受給する年金・・・4・5月分の年金
  • 8月に受給する年金・・・6・7月分の年金
  • 10月に受給する年金・・・8・9月分の年金
  • 12月に受給する年金・・・10・11月分の年金

そのためどの月に亡くなっても、必ず「未支給年金」が発生します。

相続される未支給年金

「相続財産に含まれる年金」に分類される未支給年金は、全て相続財産に含まれます。企業年金や個人年金などの私的年金が相続財産に含まれるため、その未支給分も同様に相続財産に分類されます。

相続されない未支給年金

遺された遺族には、国民年金や厚生年金などの公的年金の未支給年金を請求する権利があります。その目的は、遺族年金の支給と同じく遺族の生活を支えるためのものであるため、公的年金の未支給年金は相続財産には含まれません。

なお、「相続されない年金」に関しては、未支給年金も含めて相続財産には該当しないため、相続放棄をした遺族でも受け取ることができます。

相続される年金

「年金受給者死亡届」の提出手続き

年金を受給している人が亡くなると、亡くなった翌月から年金を受け取る権利も消滅します。その時には「年金受給者死亡届(報告書)」を提出しなければなりません。

ただし亡くなった方の個人番号(マイナンバー)が日本年金機構にすでに収録されている場合には、「年金受給権者死亡届(報告書)」の提出を省略することもできます。

「年金受給者死亡届(報告書)」の提出先

「年金受給者死亡届(報告書)」は、亡くなった方の住民票所在地を管轄している「年金事務所」もしくは「街角の年金相談センター」へ提出します。

「年金受給者死亡届(報告書)」の提出期限

死亡届の提出が必要な場合は、原則として10日(国民年金は14日)以内に提出しなければなりません。万が一届出が遅れ、亡くなった日の翌日以後に年金を受け取った場合には、その分を後日返金しなければなりません。

必要な添付書類

「年金受給者死亡届(報告書)」を提出する場合、以下の書類を添付する必要があります。

  • 亡くなった方の年金証書
  • 死亡の事実を明らかにできる書類(戸籍抄本、市区町村長に提出した死亡診断書の写し(もしくは死亡届の記載事項証明書))

年金証書の手続き

遺族に支給される年金の種類

年金受給者が亡くなった場合、遺族に何らかの年金が引き続き支払われる場合があります。どの遺族年金が支払われるかは生前加入していた年金の種類により異なります。国民年金または厚生年金に加入していたケースについてみていきましょう。

国民年金に加入していた場合

亡くなった方が国民年金に加入しており、以下の支給条件を満たした場合、次の3種類のどれかの年金が遺族の方に支払われます。

その①遺族基礎年金

遺族基礎年金は、以下の条件が満たされている場合に支給されます。

  • 亡くなった方の条件・・・25年以上国民年金を納めていた人(もしくは国民年金加入義務期間の3分の2以上を納付している人)
  • 受給できる権利がある人・・・子がいる配偶者(もしくは子供(*))

(*)18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子。もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子。

これらの条件を満たしている場合、遺族基礎年金が支給されます。

その②寡夫年金

寡夫年金の受給の場合は子供の有無は問われません。

国民年金を納めた期間が10年以上ある夫が亡くなった場合に、妻に対して60歳から65歳までの間支給されます。

支給対象者はもちろん妻になります。

その③死亡一時金

国民年金を36ヶ月以上納めた人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった場合に、死亡一時金が遺族に対して支払われます。

死亡一時金を受け取ることができる人は優先順位が決められており、①配偶者②子供③両親④孫⑤祖父母⑥兄弟姉妹の順に従って支給されます。

なお夫に先立たれた妻の場合、寡夫年金と死亡一時金の両方の受給要件を満たす場合があります。その場合はどちらか一つを選ぶことになります。(両方を同時に受給することは出来ません)。

厚生年金からの支給

亡くなった方が厚生年金に加入していた場合、遺族厚生年金を受け取ることができます。

遺族厚生年金

厚生年金に加入している方が以下のいずれかの条件に当てはまる場合、遺族に遺族厚生年金が支給されます。

  1. 在職中に死亡
  2. 在職中に初診日のある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡した
  3. 障害等級1級または2級に該当する障害厚生年金の受給者が死亡
  4. 老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある人が死亡

なお、遺族基礎年金と遺族厚生年金は重複して受け取ることができます。

例えば会社員として勤めていた人が途中で脱サラし、厚生年金から国民年金に切り替わった場合はこの2種類の遺族年金を受け取ることができます。

遺族厚生年金

まとめ

年金の支給には相続されるものとされないものがあり、相続されないものに関しては遺産分割協議書に記載する必要もなければ相続税を課税されることもありません。また、相続されない年金に関しては、相続放棄した場合でも受給することができます。

年金の相続が発生する前に、受給の有無や手続きについて必ず確認しておくことにしましょう。