平成25年の相続税の改正により、平成27年1月1日から相続税のかかる対象が大きく変わりました。
これまでは【5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)】であった基礎控除が【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】に引き下げられたことにより、今まで相続税に関係のなかった多くの人たちにとっても、相続税対策は他人事ではなくなる時代がやって来ました。
相続税の節税対策というと、生前贈与や養子縁組などさまざまなものがあります。なかでも、最も簡単に取り入れられる方法がお墓の購入による節税対策です。
そこで今回は、相続税対策として有効なお墓にについて詳しくご紹介したいと思います。さっそくみていきましょう。
生前のお墓購入は相続税の節税対策になる
神聖な「お墓」と現実的な「節税」は全くイメージが合わないと思いますが、実は生きているうちにお墓を購入しておくと、相続税の節税対策につながるのです。
民法897条による相続財産とは
民法では、相続財産をどのように規定しているのでしょうか?民法897条によると、祭祀継承は相続財産とは別のものであると書かれています。
つまり、民法では現金預金などと祭祀継承に関わるものとを明確に分けているわけですね。
祭祀財産には相続税はかかりません
「祭祀」という言葉が出てきたところで改めて「祭祀財産」についてご説明いたします。
民法897条による祭祀財産の規定では、祖先の祭りのために使用される家系図や位牌、仏壇、墓碑、墓地は相続財産とはみなされません。
これらの祭祀財産は他の相続財産とは区別され非課税扱いとなるため、これを上手に活用すると節税につながります。
反対に、祭祀財産は相続財産には算入されません。よって、祭祀財産の購入費用が相続財産から控除されることもありません。
蛇足ではありますが、このような民法の性質上、たとえ相続放棄をしても、祭祀財産を承継することは可能なのです。
つまり、お墓などの祭祀財産は相続税がかからないだけでなく、相続人の所有物の対象ともならないのです。
祭祀財産の購入による節税シミュレーション
それでは実際にお墓を購入した場合、どれくらいの節税効果を得ることができるのでしょうか?
まず相続税の税率は、以下の表のようになっています。
相続する金額(1人当たり) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円以上 | 55% | 7,200万円 |
400万円のお墓を購入した場合、最も低い税率は10%ですから400万円×10%=40万円。最も高い税率で計算した場合で400万円×55%=220万円の節税効果が見込まれます。
注意!節税効果があるのは生前購入のみ
このように、お墓を購入することで相続税をかなり節税することができます。ただし、注意点があります。それは、相続税の節税効果があるのは祭祀財産を生前に購入した場合に限られるという事です。
お墓を生前に購入する人とお墓を死後に購入する人と比べると、生前に購入する人の方がまだまだ少ないため、生前にお墓を購入する事には抵抗がある方もいらっしゃいます。ただし、節税の点から言うと、お墓の購入は生前に済ませていたほうがお得です。
お墓は購入方法にも注意が必要!!
お墓の購入には節税効果があるとお話ししましたが、お墓の購入方法についてもいくつか注意点があります。それぞれみていきましょう。
生前にお墓を購入したが、お墓の代金の支払いにローンを組んだ場合
お墓の支払いのためにローンを組むこと自体は全く問題ありません。しかし万が一ローンが完済する前に亡くなってしまった場合はどうなるでしょうか?
祭祀財産は先程からの話どおり相続財産に含まれませんが、同時にローンの残債を債務として相続財産から差し引くことも出来ません。そのためこの場合、相続税の節税効果は残債分だけ薄れてしまいます。
つまり、相続税の節税効果を期待してお墓を購入する場合、万が一に備えて現金一括払いで購入が望ましいということになります。
法外な祭祀財産は否認される場合も
祭祀財産は相続財産には含まれないとはいうものの、相続税を減らそうとして、一般常識で判断して法外に高額なお墓や仏壇を購入した場合はどうなるでしょうか?
このような場合、税務署から相続税の課税逃れと判断され、祭祀財産の一部(もしくは全部)が否認される可能性があります。
お墓の購入によって節税対策を行う場合、あくまで一般常識と照らし合わせて不自然のないような範囲内で行うことが大切です。
お墓購入にかかる費用とその流れ
以上のように、いくつかの注意点を予め知っておけば、簡単に節税することができるのがお墓の購入です。
しかし、お墓について特にその購入手順や相場に関して知っている人は少ないです。一生のうちで何度も購入するものではないため、ほとんどの人にとっては初めての経験になるわけですから、知らなくても当然です。
ここでは一般的なお墓の購入方法や相場費用、その他の流れについてお話してみたいと思います。
お墓購入までの流れ
それではまず、一般的なお墓購入までの流れを見てみましょう。大まかに言うと、以下3段階でお墓の購入が完了します。
- 霊園・墓地を決める
- 墓地の契約を行い、永代使用料、管理料などを支払う
- 墓石を決め、代金を支払う
ちなみに一番気になる料金の相場ですが、霊園や墓地に支払う永代使用料の相場は場所によってかなり開きがあります。
関東でいうと、東京23区で約160万円~200万円、千葉県で約20万円~40万円ほどです。
また、管理料の相場は年間で約4,000円~14,000円程度ですが、この管理料にも場所によってかなり開きがあります。
そのため、ご自身の予算や場所の都合と照らし合わせ、どの霊園、どの墓地にするかを決めなければなりません。
また、永代使用料ですが、これはあくまで「使用料」であり、土地そのものを購入するわけではありませんのでその点も気を付けておかないといけません。
最後に墓石の値段ですが、これもピンからキリまでさまざまなものがあります。全国の墓石の平均購入金額は160万円前後となっているので、この金額を購入する時の一つの目安として判断すると良いでしょう。
次世代が継承しやすいお墓のポイント
少子化と都市部への人口の一極集中化により、旧来では考えられなかった問題がお墓に関しても発生していることをご存知でしょうか?
少子化が進むことで、祭祀継承者(=お墓を継ぐ人)が途絶えるケースが現実に出始めているのです。また、少子化に加えて未婚化もこの状況に拍車をかけ、結果としてお墓を作る事自体ためらうケースが増えてきているのです。
しかし、生前にお墓を建てないと節税効果を得ることはできません。また、お墓の購入はほとんどの人が初めての買い物となるため、選び方に失敗してしまったりお墓の管理がしにくい場所を選んでしまうケースも珍しくありません。
こういった事態を避けることができ、徐々に増えているのが「両家墓」です。両家墓では、違う姓で二階建て(もしくは三階建て)のお墓を建てます。両家墓の場合、お墓のお手入れやお墓参りなど親族の将来的な負担を少なくすることができるので、節税対策としてお墓を建てる場合にも必要に応じて取り入れてみると良いでしょう。
まとめ
お墓や仏壇のような祭祀財産の生前の購入は、将来的に相続税の節税につながります。いくつかの注意点をしっかりと押さえて、節税に役立てると良いでしょう。
また、少子化・未婚化が進んだことにより祭祀継承者が断絶してしまう恐れもあるため、日頃から出来るだけ親族で集まる機会を作り、じっくりと話し合うことで後のトラブルを防ぐ準備をしておくことが大切です。
そのほか相続税の節税方法やトラブル回避のポイントについては、相続専門の税理士にお気軽にご相談ください。