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NISAとiDeCoは、どちらも個人の資産形成を支援するために設けられている制度ですが、その内容には大きな違いがあります。

NISAはいつでも売却・引き出しが可能で、年間投資上限額も大きい一方、死亡時にはそのまま相続財産となるため、資産額が大きいほど相続税の負担が増える可能性があります。一方、iDeCoは税制優遇が手厚いだけでなく、相続時には一定の非課税枠が利用できるため、相続税負担の軽減につながる場合があります。

本記事では、NISAとiDeCoの相続における違いをはじめ、税金の計算方法、非課税枠の考え方、間違えやすいポイントまで、現行制度に基づいて詳しく解説します。

NISAとiDeCoで相続の扱いはどう違うのか

NISAとiDeCoは、相続時の扱いが大きく異なります。そこでまず、両者の特徴を整理し、資産の引き継ぎ方や評価方法、税金の扱いなどがどのように違うのかを確認してみましょう。

NISAとiDeCoの相続における決定的な違い

NISAとiDeCoは、相続時の扱いが根本的に異なります。以下に、主な特徴を整理します。

項目 NISA(新NISA) iDeCo
相続時の資産の形態 有価証券(株式・投資信託など)のまま 死亡後、死亡一時金として現金化される
相続税の評価 死亡日の終値など 死亡退職金と同じみなし相続財産として扱われる
相続税の非課税枠 なし 500万円 × 法定相続人の数の非課税枠あり
相続後の資産形態 相続人がそのまま特定口座などで保有可能 現金(死亡一時金)として受け取り

NISAは、通常の投資資産と同様に扱われるのに対し、iDeCoは、死亡退職金と同様のみなし相続財産として扱われるため、非課税枠が設けられています。

相続税対策としての優位性比較

NISAとiDeCoでは、相続税対策としての優位性が大きく異なります。特に、新NISAの登場によって生涯非課税枠が1,800万円に拡大した現在では、NISAの保有資産が大きくなるほど、この違いが重要となります。下表をご覧ください。

項目 NISA iDeCo 相続時の優位性
相続税の非課税枠 なし 500万円 × 法定相続人の数 iDeCo が圧倒的
相続税評価額 死亡日の終値など
(多額になるほど税負担増)
みなし相続財産
(非課税枠内で大幅に圧縮可能)
iDeCo が優位
相続後の柔軟性 相続人がそのまま運用可能 現金で受け取り NISA が優位
総合的な相続税対策効果 普通の金融資産と同じ 死亡後も一定の相続税優遇を受けられる iDeCo が優位

相続税対策という観点ではiDeCoに優位性がありますが、運用時の自由度ではNISAに軍配が上がります。一概に「どちらが優れている」とは言えないため、目的に合わせて両方を組み合わせるのが良いでしょう。

NISAを相続したときの税金と注意点

NISA

NISAを相続すると、保有していた資産は通常の相続財産として扱われますが、相続税の計算やその後の手続きにはいくつかの注意点があります。ここでは、NISA相続の税金の仕組みと、実務上よくある落とし穴について解説します。

死亡時点の時価などで相続税が課税される

NISAを相続した場合、保有資産全体が相続税の評価対象になります。NISAには1,800万円の非課税枠が設けられていますが、相続になるとそれを引き継ぐことはできません。

なお、NISA口座で保有していた上場株式等の相続税評価額は、以下4つのうち最も低い価額で判定し、投資信託の場合は、相続開始日の基準価額などをもとに評価します。

  • 相続開始日(死亡日)の終値
  • 相続開始月の毎日の終値平均額
  • 前月の毎日の終値平均額
  • 前々月の毎日の終値平均額

NISA相続で特に注意すべきポイント

NISAを相続する際は、以下の点に特に注意が必要です。

  • 相続人のNISA口座に直接移せない・・・死亡後は必ず課税口座に移管されるため、相続人が新NISAの非課税枠を新たに使いたい場合は、別途投資しなければなりません。
  • 金融機関の手続きに時間がかかる・・・同一金融機関であっても、戸籍謄本や遺産分割協議書などの書類提出が必要で、名義変更完了までに1ヶ月以上かかるケースもあります。
  • 家族への事前共有が重要・・・NISAの資産状況や利用している証券会社などを家族に共有しておかないと、相続手続きが大幅に遅れるリスクがあります。

これらのポイントを事前に押さえておけば、相続時のトラブルを大幅に減らすことができます。

iDeCoを相続したときの非課税枠と税金

iDeCo

iDeCoを相続する場合、NISAとは違い、税金の非課税枠が設けられています。ここでは、iDeCoを相続した場合の扱いや非課税枠について解説します。

iDeCoは死亡一時金として現金支給される

iDeCoを相続する場合、加入者が亡くなると口座は自動的に終了します。そして、保有していた資産は最終的に売却され、死亡一時金として現金で遺族に支給されます。iDeCoは、NISAとは異なり、株式や投資信託のまま移管されることはありません。また、売却は死亡した時点ではなく、遺族が金融機関に死亡を通知して手続きをした後の所定の日に行われます。

そのため、死亡日から実際に売却されるまでの間に株価が変動するリスクは、遺族が負うことになります。

500万円×法定相続人の数の非課税枠が使える

iDeCoの死亡一時金は、みなし相続財産(死亡退職金と同じ扱い)として相続税の対象になります。そのため、500万円×法定相続人の数の非課税枠が利用できます。

具体例
法定相続人が配偶者+子ども2人の合計3人の場合

  • iDeCoの非課税枠=500万円×3人=1,500万円

NISAにはこうした非課税枠がないだけに、相続税対策という観点では、iDeCoは有利になるケースがあります。

請求期限によって税金が変わる

iDeCoの死亡一時金を受け取る際は、請求するタイミングによって税金の種類とその金額が以下のように大きく変わります。

  • 死亡後3年以内に受け取った場合・・・みなし相続財産として扱われ、500万円×法定相続人の数の非課税枠が利用できます(最も有利)。
  • 3年経過後に受け取った場合・・・非課税枠が使えず、相続税ではなく一時所得として所得税の対象になる可能性があります。
  • 死亡後5年超・・・死亡一時金として受け取れなくなる可能性があります。

死亡後3年以内に請求すれば、最大の非課税メリットを受けられますが、期限を過ぎると税負担が大幅に増える可能性があります。そのため、相続が発生したら、できるだけ早く金融機関に連絡し、手続きを進めるようにしましょう。

NISAとiDeCoの相続で間違えやすいポイント

NISAとiDeCoの相続で間違えやすいポイント

NISAとiDeCoの相続では、間違えやすいポイントがいくつかあります。その中でも特に頻度が多いのが、以下の2つです。

非課税枠の併用可能性と勘違い

iDeCoの非課税枠をめぐり、よくある勘違いが2つあります。1つ目は、生命保険金の非課税枠と併用できないと思い込んでいるケースです。実はこの2つの非課税枠は完全に別枠なので、両方ともフルに利用できます。

そして2つ目は、NISAにも同じ非課税枠があると勘違いしているケースです。NISAにはこのような非課税枠は一切ないため、通常の金融資産と同じように相続税が課税されます。

このような勘違いをしていると、相続税対策としてiDeCoの強みを十分に活かせなくなってしまうため、正しく理解しておくことが非常に重要です。

手続き期限のミスと書類不備

iDeCo相続で特に多い失敗が、手続き期限のミスです。iDeCoの死亡一時金は、死亡日から3年以内に請求しなければ、500万円×法定相続人の数の非課税枠が使えなくなり、一時所得として所得税がかかってしまいます。また、5年を超えると請求権自体が消滅するリスクもあります。

さらに、書類の不備により、手続きが長引くケースも少なくありません。必要書類(戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明など)が揃っていないと、金融機関で何度もやり直しとなり、場合によっては3年以内の期限に間に合わなくなることもあります。相続が発生したら、できるだけ早い段階で金融機関に連絡し、必要書類を準備するようにしましょう。

まとめ

NISAとiDeCoは相続時の扱いが大きく異なります。NISAは死亡時点で非課税メリットが終了し通常の金融資産と同じく相続税がかかりますが、iDeCoは500万円×法定相続人の数の非課税枠を利用できるため相続税対策として有利です。

ただし、請求期限のミスなどで思わぬ税負担が生じやすいため、心配な方は、できるだけ早い段階で税理士などの専門家に相談することをおすすめします。