相続税対策として、いま財産を管理するのに民事信託というやり方が注目を集めています。民事信託とは一体どのようなものなのでしょうか。今回は、民事信託のメリットやデメリット、誰にとって有効なのかについて詳しく解説していきます。
さっそくみていきましょう。
民事信託って?
民事信託とは、財産を家族ごとにオーダーメイドで管理し、資産を継承する仕組みのことです。従来の民法や家庭裁判所とはまた違う、自由な財産管理を行うことができます。また、遺言書と成年後見制度を補完する役割もあります。
税理士や司法書士などの専門家の間に入ってもらい、財産を誰にどのような形で渡すのかを決め、管理していくこともできます。財産を渡す側を委託者、財産を預かり管理する側を受託者、受託者による信託行為で発生する収益を得る人のことを受益者と呼びます。
この3者は民事信託を理解する上で必要な単語なので、ぜひ覚えておきましょう。
民事信託のメリット・デメリット
民事信託がどのようなものかという概要がわかったところで、民事信託のメリットとデメリットを確認していきましょう。民事信託のメリットは大きく分けて3つあり、委託者の気持ちが尊重される点、倒産しても問題がない点、そして跡継ぎ遺贈型受益者連続信託というやり方を使える点が挙げられます。
民事信託のメリット1:委託者の気持ちが尊重される
民事信託は財産を預ける側である委託者にとって、自分の意思が受け継がれるという点でとても大きなメリットがあります。
例えば、突然委託者が意識不明になってしまったり、認知症になってしまった場合にも、自分が持っている財産をどう使って誰に受け継ぐのかといった意思を尊重し、残された人たちが財産を管理してくれるので、安心して民事信託に任せることができます。
自分の意志を尊重してもらえるという点では、民事信託は遺言書に似たはたらきをします。しかし、遺言書の場合は委託者の死後までは詳細が家族に分からないこともあるのに対して、民事信託は家族が財産をどうするか、その行方を知ることが可能です。
民事信託のメリット2:倒産しても問題がない
民事信託の第二のメリットに、倒産した場合にも問題が発生しないという点があります。
民事信託は信頼できる誰かに財産を預けるものですが、その受託者(財産を預かる側)が仮に倒産したとしても、自分が預けた財産には影響を受けません。
債権者に没収されるということはないのです。信託財産を使われることもなく、安心して預けることができます。
民事信託のメリット3:跡継ぎ遺贈型受益者連続信託が使える
3つ目のメリットとして、跡継ぎ遺贈型受益者連続信託が使えることが挙げられます。
跡継ぎ遺贈型受益者連続信託とは、財産を受け継ぐ人・受益者が亡くなっても、その次の受益者を新しく決めることができるというものです。これは遺言書ではできないことなので、民事信託だけのメリットとなります。
たとえば不動産を自分の娘が受益者になっている場合、その娘が亡くなった場合には、娘の子供、娘の孫など、次々と財産を受け継ぐ人を指定することができます。
民事信託はこんな方に有効です
ではどのような方に民事信託がおすすめなのでしょうか。
まず、子供の立場から年老いた親が財産を持っているものの、将来的に認知症になるなどして財産を管理できなくなることを不安に思っている方。そして、不動産を多く持っている方。
また、財産管理をする人が決まっておらず、財産の全貌がまだ分かっていない方。相続の話し合いができておらず、この機会に話してみようかと思っている方。
子供がいないので誰に財産を渡すか悩んでいる方。介護してくれた人の、ねぎらいに応じて相続を決めたい方。生前贈与として利用したい方。事業の継承で困っている方。
などに民事信託はおすすめです。このなかのどれかにあてはまっている場合、民事信託について一度税理士に相談してみると良いでしょう。
民事信託の仕組みと基本構造
では、民事信託について、委託者、受託者、受益者と信託監督人の関係と基本構造についてみていきましょう。
まず委託者がいます。委託者とは財産を持っており、これから財産を渡す人のことです。その委託者が、受託者と呼ばれる相手と信託契約を結びます。受託者は、信託法に則り財産を管理する必要があります。
委託者・受託者・受益者の関係は以下の通りです。
- 委託者 → 信頼 → 受託者
- 受託者 → 義務 → 委託者
- 受益者 → 権利 → 受託者
信託監督人は、たとえば受益者が未成年であったり、反対に高齢すぎたり、知的障害を持っていたりする場合に、設けられます。
受益者の代理で権利を行使し、ニーズを満たすこととなります。受託者が適切でない行為をすることで、受益者が損をすることがないように信託監督人が監視を行います。
なぜ今民事信託が注目されるの?
ではなぜいま、民事信託が注目を集めているのでしょうか。それは制度の仕組みがしっかりしており、トラブルが少ないからです。遺言書や成年後見人にもしっかり対応することができ、そうした事例にまつわるトラブルを未然に防止してくれます。
また、認知症の人も増えてきたので、認知症になる前に民事信託しておこうという意識が、ここ最近高まっています。
民事信託を使えば節税になりつつ、財産を管理することができます。超高齢社会の日本において、財産の管理がしっかりとできる間に、民事信託を行い管理体制を整えたいと考える人が増えているのです。
こうした点を踏まえて、いま民事信託が注目を集めています。
ただし、専門家に依頼したほうが無難なケースもあります。行政書士・税理士に任せると、プロフェッショナルなので安心です。また、相続専門の行政書士・税理士に任せることが理想的でしょう。しっかりと節税を考えたアドバイスをしてもらえます。
まとめ
いかがでしたか。今回は、民事信託についてみてきました。未然に遺産トラブルを防ぎ、節税効果も高い民事信託。
オーダーメイドで自分の財産を管理し、しかるべき希望する相手に財産を渡すことができます。遺言書と似ていますが、生前から相続税対策を行うことができる点も、いま注目を集めてる理由です。税理士の立場からみても、この民事信託には注目です。
まずは税理士に相談し、一度民事信託について聞いてみましょう。財産をしっかりと管理できる早めの時期に相談することをおすすめします。
また、相続専門の税理士の場合、相談への回答がより的確で、予算感も低めで依頼することができます。財産を持っているが管理をどうしようか悩んでいましたら、まずはお気軽にご相談ください。