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自分自身に万が一のことがあった場合に備え、最近ではエンディングノートを書く人が増えています。エンディングノートと同じように、万が一の場合に備えて自分の想いを託すものとしては遺言書がありますが、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか?

本記事では、エンディングノートと遺言書の違いを整理したうえで、エンディングノートを作成するメリットについて解説します。

エンディングノートとは

エンディングノートとは、冒頭で述べたように、自分に何かがあった場合に備えて自分に関するさまざまな情報をまとめておくノートのことです。特に決まったフォームなどはないため各社から特色のあるエンディングノートが出版されていますが、おおむねどのエンディングノートにも、以下の項目が設けられています。

  • 自分の基本情報
  • 財産の内訳
  • 負債の内訳
  • その他の財産
  • 生命保険・損害保険の加入状況
  • その他

自分の基本情報

自分の基本情報には、氏名や生年月日、血液型だけでなく、本籍地を記載します。エンディングノートの持ち主が亡くなると、財産の相続を行うために、出生から亡くなるまでの戸籍謄本をすべて取得しなければなりません。こうした負担を軽くするために、出生から現時点までの本籍地をすべて記載しておくと良いでしょう。

財産の内訳

財産の内訳には、預貯金や不動産、有価証券などを記載します。預貯金については、金融機関名や支店名、口座番号とならび、通帳や印鑑の保管場所などを記載します。

不動産については、種類(土地、戸建てなど)や用途(自宅、投資など)、住所や名義などを記載します。可能であれば、購入時の契約書や登記簿謄本などの保管場所も記載しておくと良いでしょう。

また有価証券については、有価証券の種類(株式、投資信託など)や証券会社名、確定申告の有無などを記載します。確定申告をしている場合であれば、過去の確定申告書の保管場所を記載しておくと良いでしょう。

負債の内訳

負債の内訳には、住宅ローンやカードローンなどの会社名を記載するとともに、契約時の書類や返済予定表などの保管場所を記載します。また、人からお金を借りている場合は、相手の氏名・連絡先・借りている金額などを記載します。

その他の財産

高級ブランド品や美術品、ゴルフ会員権や自動車などは個別に明細を書き上げます。特に高価な絵画や骨とう品などがある場合は、購入額や購入時の書類、鑑定書などの保管場所なども記載しておきます。

生命保険・損害保険の加入状況

生命保険の死亡保険金や満期返戻金などは、契約者や受取人が誰であるかによって、「相続税」と「贈与税」のどちらが課税されるかが変わります。

したがって、保険契約に関する詳細を記すだけでなく、契約者や受取人、保険証書の保管場所などを記載しておかなければなりません。

その他

上記以外の項目については、こちらに記載します。たとえば、スマートフォンやPCなどのパスワード一覧や葬儀の希望、連絡先や家族へのメッセージなどを書いておくと良いでしょう。

このように、エンディングノートには自分に関する情報と自分の意思(葬儀の有無など)をまとめ、家族がそれを見ればすぐに分かるようにしておくことを目的に記載します。したがって、遺言書と類似する点も多いですが、いくつかの点でエンディングノートと遺言書は違います。

エンディングノートと遺言書5つの違い

エンディングノートと遺言書には類似する点も多いですが、違う点もいくつかあります。その中でも特に重要なのが、以下の5つです。

  • 法的拘束力がない
  • 書き方にルールがない
  • 書く内容にルールはない
  • 書くための費用がほとんどかからない
  • 開封にルールがない

エンディングノート

違い1.法的拘束力がない

エンディングノートと遺言書の最大の違いは、法的拘束力の有無です。エンディングノートには何でも好きなことを好きなように書けますが、その内容に法的拘束力はありません。

たとえば、財産の相続方法などがエンディングノートに記されていたとしても、相続人がその内容に従う必要はありません。ですから、エンディングノートに家族への希望などを書いたとしても、それが守られるかどうかは家族次第です。

これに対し、遺言書には法的拘束力があります。相続財産の分割方法や相続人の指名ができ、それを強制させることも可能です。

違い2.書き方にルールがない

エンディングノートと遺言書の最大の違いは、法的拘束力の有無です。エンディングノートには何でも好きなことを好きなように書けますが、その内容に法的拘束力はありません。

エンディングノートには書き方のルールがありません。エンディングノートとして売っているものを買ってきても良いですし、市販のノートを使って書いても構いません。

これに対し、遺言書を書く場合は基本的にPCやスマートフォンなどを使わず、定められた形式に従い自筆で書かなければなりません。もし、決められた形式でない遺言書を作成した場合には、法的拘束力が認められません。

違い3.書く内容にルールはない

エンディングノートには、何を書いても構いません。家族への想いや感謝のメッセージ、葬儀で使う写真など何でも好きなように買いて構いません。

これに対し、遺言書には、定められた内容を記載しなければなりません。相続分の指定や遺産分割方法の指定、相続財産の処分など、記載すべき内容はあらかじめ定められています。

違い4.書くための費用がほとんどかからない

エンディングノートを書く場合は、基本的にノートの購入代金以外に必要な費用はありません。

これに対し、遺言書の場合は、作成に高額な費用が必要となる場合があります。自筆で書く「自筆証書遺言」であればエンディングノートと同じように費用がほとんどかかりませんが、公証人に依頼して「公正証書遺言」を作成する場合は、財産の総額に応じて数万円から数十万円が必要になります。

違い5.開封にルールがない

エンディングノートには、開封のルールはありません。書いた人が自分の家族などにあらかじめ見せておくことも出来ますし、ご本人が意識不明の状態の時に家族などが見ても構いません。

しかし、遺言書を開封する場合は、家庭裁判所の検認を受けたうえで、相続人の全員が揃わなければ開封できません。万が一開封してしまうと、法律違反となり過料が課されるだけでなく、最悪の場合相続人としての権利も失われてしまいます。

それでもエンディングノートを作成するメリット

遺言

前章で述べたように、エンディングノートには遺言書と違い法的拘束力はありません。ですから、残された家族にメッセージを残したとしても、強制力はともないません。それでもエンディングノートを作成するメリットは、おもに以下の2つです。

  • 家族の負担を軽減させられる
  • ご自身も安心して残りの人生を過ごせる

家族の負担を軽減させられる

財産の相続に関する指示などについては遺言書で指定ができますが、「葬儀やお墓はどうすれば良いのか?」「誰に連絡して欲しいのか?」などについては、一緒に暮らしている家族でも分からない事もあるでしょう。

また、エンディングノートに預金通帳や保険証券などの保管場所が記載してあれば、残された家族は、探す手間なくスムーズに手続きが進められます。

このように、ご自身が亡くなった後で家族の負担が軽減させられる点が、1つ目のメリットです

ご自身も安心して残りの人生を過ごせる

エンディングノートを作成しておくと、遺言書には書けない、ご自身が本当に伝えたかったことなどが伝えられます。また、財産の状況を確認できるだけでなく、これまでにやり残したことなども整理できます。

そのため、安心して残りの人生が過ごせます。これが2つ目のメリットです。

まとめ

エンディングノートには決まった様式などはないため、書き残したいことや伝えたいことなどを何でも自由に書くことができます。しかし、書いた内容に法的効力はないため、その点には注意が必要です。

財産の相続方法などを指示したい場合は、エンディングノートとは別に遺言書を作成する必要があります。そのため、遺言書の作成が必要かどうかを知りたい方は、税理士などの専門家に相談してから判断することをお勧めします。