相続をどのように分けるかには、いくつかの方法があります。今回は、相続の分け方のひとつである遺産分割について種類からメリット・デメリットまでご紹介します。
特に、事業を継承する場合や、遺言書の通りに遺産を分けない場合に利用されることの多い遺産分割について詳しくみていきましょう。
遺産分割とは
遺産分割は、相続人の全員が合意して、自分たちが納得いく形で遺産を分割する方法です。遺言書が残されていない・遺言書が有効でないといった場合に、相続人同士で話し合って遺産の分け方を決定します。
相続人が集まり、どのように遺産を分けるか協議することを遺産分割協議といいます。遺産分割協議で決定した事項を遺産分割協議書に記載し、遺産分割後に相続人同士でトラブルにならないように証明として残しておきます。
遺産を遺言書ではなく遺産分割によって分けることで、被相続人の主観的な配分ではなく相続人同士が納得のいく形で遺産を配分することができます。
遺産分割のメリットは多数
遺産分割にはさまざまメリットがあります。民法以外の部分で遺産を分割することにどのようなメリットがあるのでしょうか。
メリット1:遺産の分散を避けることが可能
例えば遺産に会社などの事業がある場合、会社にまつわる権利や財産が相続人間で分散してしまうと会社を動かす際にひとりひとりの権利を持っている相続人の許可が必要となり、色々と面倒が発生します。
そのような場合、会社に関する遺産は1人の人に集約し、その他の遺産をそれ以外の相続人に分割することでこのような問題を回避することができます。
このように、事業継承のように分散すると問題の発生するような遺産を遺産分割協議で話し合うことで分散させないようにすることができます。
メリット2:共同所有を回避できる
例えば、遺産として残された物件が複数人の相続人で共同所有になっている場合、その物件を売りたい・誰かに貸したいと思った場合には、共同所有権を持つ全ての相続人の許可が必要です。
このように共同所有となっていると、相続人間で何かとトラブルになりやすいので、共同所有をしなければならない正当な理由がない限りは避けたほうが良いです。
遺産分割をしっかりと行うことで、共同所有を回避しそれぞれの相続人に遺産を分割することができます。
遺産分割の3つの方法
では、遺産分割の具体的な方法をみていきましょう。遺産分割には大きく分けて3つの方法があります。ちなみに、これらの遺産分割の方法は、組み合わせることも可能です。それぞれの遺産分割方法の注意点も合わせてみていきましょう。
遺産分割方法1:現物分割
遺産を換金せずにそのままの形で分割する方法を現物分割と言います。手続きがとてもシンプルで、簡単なのがメリットです。
ただし、換金して分割する方法に比べて、分割の際にトラブルになりやすいので注意が必要です。
現物分割の注意点
現物分割は、方法がシンプルなのでサクッと遺産分割を済ませることができますが、「誰に何を相続するか」でトラブルになるケースが少なくありません。例えば土地の場合、いくらに相当するかは評価額によって異なります。評価額がいくらになるかは、評価する人によって異なるのです。
よって、相続人それぞれに配分された現物を公平に分割するのが難しく、分割された相続人が納得しない場合も多いのです。このように、現物分割は公平な分割になりづらいというデメリットがあります。
遺産分割方法2:換価分割
換価分割は、対象となる遺産を売却し、そのお金を、あらかじめ取り決めた割合で分割する方法です。例えば、5,000万円の価値がある土地が残されたとします。その土地を5,000万円で売却し、そのうち3,000万円を妻に、1,000万ずつを長男と次男に分ける、といった遺産分割を換価分割と呼びます。
換価分割は現物分割と比べて多少の手間と税金がかかります。しかし、すべて現金にして分割するので、不平等になることがありません。遺産相続をシンプルかつ平等に行うことができるので、広く使われています。家が残されたがもう必要ない。そんなときは換価分割によって、家を売った代金を皆で分けるとスムーズです。
この換価分割は、遺産分割の3つの方法のうち、ほか2つの方法が難しいケースでもよく行われます。遺産を分けたいけれど揉め事になるとか、それほど残された現物遺産に強い思い入れがないといった場合に、換価分割が使われます。
換価分割の注意点
換価分割の場合、不動産や自動車を売却するために手間と時間がかかります。また、譲渡取得税などの税金もかかりますので、税金の分だけ遺産が目減りすることになります。
さらに売却するための費用もかかるので、公正に分割できるぶん遺産が減ってしまうことに注意が必要です。
遺産分割方法3:代償分割
代償分割は、特定の人が遺産を受け取り、かわりに現金を他の相続人に支払う方式です。例えば5,000万円の土地を、長男が取得し、代わりに妹に2,000万円支払うというケースが代償分割にあたります。
これなら、遺産の分散を避けることができ、そして遺産が細切れに分割されてしまうこともありません。家を残したいとか、事業を継続したいとかいう場合に有効な方法です。
代償分割の注意点
代償分割は、資産を多く受け取った人が、その他の相続人に現金で支払うという方式です。しかしこれは、受け取った人に現金で支払う能力がなければ成立しない遺産分割でもあります。
現金として支払う能力があることが前提の方法となることに注意が必要です。
まとめ
いかがでしたか?今回は遺産分割の方法について詳しくみていきました。遺産分割を円滑に行うためには、まずはそれぞれの分割方法のメリット・デメリットをしっかり把握し、各相続人が納得できる形で行うことが大切です。
また、どれかひとつを選ばなければならないというわけではないので、適宜組み合わせて、最適な遺産分割を行っていくことが、遺産分割をスムーズかつトラブルなく、そして公平に行っていくためのポイントとなります。
遺産分割はデリケートな話ですが、それぞれに合った方法で分割することで、親族同士が円滑に遺産を分割できるようにすることが大切です。