相続財産に含まれる「タンス預金」などについて、「申告しなくてもバレないだろう」と思っていませんか?実は、相続税の無申告は、税務署にほぼ100%の確率で発覚します。では、どうして無申告がバレてしまうのでしょうか?さらに、バレた場合に科されるペナルティにはどのようなものがあるのでしょうか?
本記事では、相続税の無申告が発覚する理由や具体的なペナルティ、未然に防ぐための対策について詳しく解説します。
相続税の無申告がかなりの確率でバレる理由とは?
相続税の無申告がバレるのはなぜでしょうか?実は、税務署が無申告を発見する仕組みがあり、その背景にはいくつかの重要な理由が存在します。
税務署が無申告を発見するケース
税務署が相続税の無申告を発見する主な要因は、以下の通りです。
税務署からの金融機関への照会・・・税務署が相続税の調査を行う際、故人の口座残高や取引履歴について金融機関に照会を行います。金融機関はこの照会に対して情報を提供する義務があるため、税務署は相続財産を把握しやすくなり、無申告が発覚する可能性が高まります。
不動産登記情報の共有・・・不動産の相続登記が行われると、その情報は税務署と共有されます。これにより、税務署は不動産の相続内容を把握し、無申告が疑われるケースを発見することができます。
他の相続人からの情報提供・・・相続人同士で意見が対立する場合、他の相続人が税務署に無申告の情報を提供することがあります。特に相続でのトラブルがあると、税務署への通報がきっかけで無申告が発覚するケースも少なくありません。
税務署の独自調査・・・税務署は過去の納税状況や資産状況をもとに無申告の可能性がある人物を抽出し、調査を行っています。税務署独自のデータと分析により、相続における無申告が発見されることがあります。
マイナンバー制度と税務調査の強化
マイナンバー制度の導入により、税務署は個人の資産や収入を簡単に追跡できるようになっています。特に、金融機関の口座や不動産、株式などはすべてマイナンバーと紐づけられているため、相続が発生した際にはこれらの資産が自動的にチェックされる仕組みが整っています。
そのため、無申告が税務署に発覚する可能性が高くなり、以前よりも調査が厳格化されている状況となっています。
時効とその誤解
相続税の時効は、原則として申告期限の翌日から5年です。しかし、無申告が意図的で「悪意がある」と税務署が判断した場合には、この時効が7年に延長されてしまいます。したがって、無申告で時効を迎えたからといって、安心できるわけではありません。
相続が発生してから申告期限までの10か月を経過し、その翌日から時効に向けたカウントダウンがスタートする訳ですが、悪質と判断されると7年間追徴課税のリスクが続くため、「時効を迎えたから安心」というわけにはいきません。
相続税の無申告による手痛いペナルティとは?
相続税の無申告には、本来納付すべき税金とは別にペナルティが科されます。そこでこの章では、具体的にどのようなペナルティが課されるのかについて解説します。
無申告加算税とその影響
相続税を無申告で放置していると、後に税務署から指摘された際に「無申告加算税」というペナルティが科されます。この無申告加算税は、申告の遅れを罰するために課される追加の税金で、申告期限を過ぎた後に税務署からの指摘があったかどうか、また指摘前に自主的に申告したかどうかで税率が異なります。
具体的には、本税に対して以下の税率で課税されます。
納付すべき税額が50万円までの場合・・・15%
納付すべき税額が50万円を超え300万円までの場合・・・20%
納付すべき税額が300万円を超える場合・・・30%
ただし、税務署からの調査を受ける前に自主的に申告する(期限後申告)場合は、上記の税率ではなく納付すべき税金の5%の無申告加算税が課されます。
重加算税や延滞税
意図的な無申告や隠ぺいがあると、「重加算税」が課されます。重加算税は非常に高い税率(本税の35~40%)が適用され、無申告加算税よりも重いペナルティとなります。
また、納付が遅れた期間に応じて延滞税も別途加算されるため、申告が遅れれば遅れるほど税負担が増していきます。
無申告が相続人や家族に与える影響
無申告の状態を放置しておくと、相続人全体に影響を与える可能性があります。具体的には、他の相続人にも税務調査が及ぶことがあるため、家族全体が税務署から確認を受けることで不安や負担が増しかねません。
また、重加算税などのペナルティを巡って相続人の間で税負担が不公平になる可能性もあるため、家族間でトラブルが生じる原因にもなりかねません。
無申告のまま税務署からお尋ねが来たときの対処法
相続税の無申告を続けていると、税務署から「お尋ね」通知が届くことがあります。この通知に対しては迅速かつ慎重に対応することが重要です。ここでは、「お尋ね」への対応方法や、修正申告の手順、税理士のサポートについてわかりやすく解説します。
税務署からの「お尋ね」通知への対応
税務署からの「お尋ね」通知とは、税務署が相続の有無や財産の状況を確認するために送ってくる書類のことです。「お尋ね」に対する回答は強制ではありませんが、この通知を放置すると万が一の場合悪質とみなされる恐れもあり、できるだけ回答するように心掛けましょう。
なお、「お尋ね」が届いた際は、以下のポイントに従って対応することが大切です。
早急に対応する・・・通知が届いたら、できるだけ早めに税務署に返答するようにしましょう。放置すると状況が悪化し、最悪の場合厳しい調査が行われる可能性があります。
事実を正確に伝える・・・通知には、故人の財産状況や相続の内容について詳しく回答する欄があります。隠さずに正確な情報を記入することが大切です。誤った情報を伝えると、後の手続きがさらに複雑になることがあります。
修正申告の必要性とその手順
無申告が発覚した場合、ペナルティを軽減するために「修正申告」を行うことが必要です。なお、修正申告を行う場合、一般的に以下の手順に従って申告を行います。
正確な相続財産を確認する・・・まず、故人が残した財産の全体像を把握します。預金、不動産、株式などすべての財産を確認し、正確に記録します。
申告書を作成する・・・相続税の申告書を改めて作成し、無申告だった分を追加入力します。
税務署に提出して納付する・・・完成した申告書を税務署に提出し、無申告分の税金と延滞税、加算税などを支払います。ただし、税務署の指摘を受ける前に申告すれば、ペナルティが軽減される可能性が高くなります。
税理士の活用
無申告や修正申告の手続きは複雑ですが、税理士に相談するとこれらをスムーズに進めることができます。ちなみに、税理士は納税者に代わり、以下のような業務を行ってくれます。
税務署とのやり取り・・・税理士が税務署との交渉や問い合わせを代行してくれるため、余計な負担を軽減できます。
正確な書類作成・・・相続税の申告に必要な書類を税理士が正確に作成し、記載漏れやミスを防ぎます。
ペナルティの軽減・・・税理士のアドバイスを受けることで、ペナルティが最小限に抑えられる可能性があります。
まとめ
相続税の無申告には、様々なリスクとペナルティが伴います。税務署は無申告を発見するための仕組みを整えており、金融機関や不動産情報、相続人からの情報提供などにより、ほとんどの場合無申告は発覚してしまいます。
万が一無申告が税務署にバレれば、加算税や重加算税、延滞税などの負担が増し、相続人や家族にも大きな影響を与えかねません。したがって、無申告に気づいた場合は、できるだけ早めに修正申告を行うようにしましょう。もし、自分で対応するのが難しいと思われた場合は、税理士などの専門家に依頼すると良いでしょう。