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両親や祖父母など、個人から贈与を受けた場合には贈与税の申告が必要になる場合があります。贈与税の申告は、どのような場合に必要になるのでしょうか?

また、贈与税の申告を怠ったことで税務署に見つかって大変な目にあった人の話を耳にすることがあります。贈与税の申告漏れは、必ず税務署に見つかってしまうのでしょうか?

今回は、贈与税の申告が必要になる基準や手続きの流れ・申告漏れがあった場合について詳しくご紹介していきます。

贈与税には申告が必要?

そもそも贈与税の申告は、贈与があった場合必ず必要なのでしょうか?

年間110万円以下の贈与であれば申告する必要はありません

結論から先にお話しすると、1年間で受けた贈与の合計金額が110万円以下であれば贈与税の申告をする必要はありません。もちろん納税する必要もありません。

贈与税の基礎控除とは

贈与税には「基礎控除」という所得控除が設けられています。「基礎控除」とは所得を減らす(=控除する)役割を果たすもので、基礎控除の金額分だけ受けた贈与をマイナスすることができます。

贈与税の基礎控除は110万円と決められているので、例えば1年間で合計100万円の贈与を受けた場合には
贈与額100万円-基礎控除110万円=0円(マイナスの場合は0円とします)
となるため、贈与税額も0円となるわけです。

このため、贈与を受けた金額の合計額が年間110万円以内であれば、申告も納税する必要もなくなるわけです。

贈与税の計算は暦年課税方式で

では贈与税を計算する場合の1年とは、何月何日から何月何日までの1年なのでしょうか?

例えば企業であれば自ら決めた会計期間に従い、決算を組みます。そのため3月決算だったり9月決算だったりと様々ですが、それは企業それぞれによって決められます。

そして企業が納める法人税や消費税なども、その企業が決めた会計期間に基づいて申告・納税されます。

一方、贈与税は法人税などとは異なり、暦年課税方式を採用しています。暦年課税方式とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間の間に受けた贈与の合計額をもとに税額計算をする方式のことをいいます。

つまり贈与税を計算する場合の1年とは、1月1日から12月31日までの1年となります。

贈与税の申告について

贈与税が必要なケースとは?

では次に、どのような場合であれば贈与税が必要となるのでしょうか?

「贈与額が年間110万円を超えた場合」「相続時精算課税を適用した場合」「法人から贈与を受けた場合」のケース別にみていきましょう。

暦年贈与が110万円を超えた場合

前章で述べたように、1年間で受けた贈与の合計が110万円を超えてしまうと、基礎控除を引いて残った所得金額に対して贈与税が発生します。

そのため、暦年贈与の合計金額が110万円を超えた場合には、贈与税の申告及び納付が必要となります。

相続時精算課税を適用した場合

相続時精算課税制度を利用した場合、贈与の申告をする必要はあっても納税をする必要はありません。

なお相続時精算課税とは、60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子または孫に対して財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度のことをいいます。

相続時精算課税制度を利用した場合、父母など贈与者1人につき贈与を受けた財産の価額が累計で2,500万円に達するまで贈与税を非課税にすることができます。

ただし、この制度を利用して受けた贈与財産は相続時には相続財産に算入されるため、相続税の節税になるわけではないことに留意しておかなければなりません。

相続時精算課税制度について詳しくはこちらのページもご参考ください。

相続時精算課税制度を利用すると良いケースと手続きの流れ

法人から贈与を受けた場合

法人から個人へ贈与を受けた場合は、贈与ではなく所得とみなされます。そのため法人から贈与を受けた場合には贈与税の申告は必要ありませんが、所得税の申告が必要となります。

贈与税の申告手続き

贈与税の申告漏れはバレる?

贈与税の申告を行わなかった場合、税務署などに見つかってしまうのでしょうか?

不動産の贈与は必ずバレる

不動産の贈与を受けた場合、名義を変更するために法務局で所有権移転登記を行います。この登記情報は法務局から税務署に提供されるため、「いつ・誰が・どの不動産を・誰に贈与(もしくは売却)したのか」の情報は必ず税務署が知ることとなります。

そのため不動産の贈与に関する申告漏れは、ほぼ100%税務署に見つかることになります。

金銭などの贈与は相続税の調査時にバレる

不動産と比べると金銭などの贈与については、よほど多額でない限り、贈与してただちにバレるわけではありません。

ただしこのような贈与の申告漏れがあった場合、贈与者が亡くなった後で行う相続税の申告との整合性がとれなくなってしまいます。

こうなると、相続税の税務調査時に過去の申告漏れは簡単に見つかってしまいます。

いずれにしても贈与税の申告漏れが見つからなくて済む確率はかなり低く、またリスクを冒した割には得られるリターンが少ないため、期限内に適正な申告を済ませることをおすすめします。

贈与税の申告漏れの手続き

贈与税を申告しなかった場合のペナルティとは

贈与税を申告しなかった場合のペナルティは、大きく分けると二つです。一つは税務署からのペナルティ(行政罰)。そしてもう一つは裁判所からのペナルティ(刑事罰)です。

税務署からのペナルティ

贈与税を申告しなかった場合、税務署からは以下のペナルティのどれか(もしくは全て)を受けることになります。

無申告加算税

申告期限までに納税しない場合に課せられるペナルティです。納税すべき贈与税額対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の税率で課税されます。

重加算税

申告すべき事実を仮装隠蔽し申告を行わなかった場合や、仮装に基づいて過少申告を行った場合に課せられるペナルティです。

重加算税は大変厳しいペナルティで、主に脱税などに対して課税されます。納税すべき贈与税額に対し、無申告であれば40%、過少申告であれば35%が課税されます。

延滞税

納税期限を過ぎてからの金利として課税される税金です。税率は市中金利を鑑み、それと連動しているため一定ではありません。しかし最高金利は決まっており、納付期限から2か月以内が7.3%、それ以降が14.6%となっています。

これら以外にも、本来の納税額よりも(申告の間違いなどにより)少なく納税した場合には、過少申告加算税のペナルティを受けることになります。

裁判所からのペナルティ

贈与税を申告しないと最悪の場合、脱税により刑事罰を受けることになります。国税局が検察庁に告発し、検察が起訴すると裁判となります。

無申告による脱税が故意であると認定された場合には、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科せられることになります。

なお裁判所による刑事罰の場合は5年、税務署による行政罰の場合には最長7年で時効を迎えることになりますが、その間の精神的なストレスを考えると決して得策だとは言えないでしょう。

贈与税の申告手続き

贈与税の申告方法と納付期限

贈与税の申告は、贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までの間に行なわなければなりません。また納付期限は、申告期限の最終日である3月15日となります。

贈与税の申告書の種類

贈与税の申告書は、主となる第一表以外に、第一表の二、第二表の3種類があります。どの申告書を利用するのかは、申告する内容により異なります。

具体的には、

  • 暦年課税のみを申告する人・・・第一表のみ
  • 相続時精算課税のみを申告する人・・・第一表と第二表の2種類
  • 暦年課税と相続時精算課税の両方を申告する人・・・第一表と第二表の2種類
  • 「住宅取得等資金の非課税」と暦年課税の両方を申告する人・・・第一表と第一表の二の2種類
  • 「住宅取得資金の非課税」と相続時精算課税の両方を申告する人・・・第一表と第一表の二と第二表の3種類

となります。

贈与税の申告方法

贈与税の申告書には、贈与者の氏名や贈与年月日、贈与財産の種類や金額などを記載します。贈与税の申告については、自分で申告する方法と税理士などの専門家に依頼する方法の2種類があります。

自分で申告する場合、申告書は

  1. 税務署へ取りに行く
  2. 国税庁のHPからダウンロードする

の2つの方法から選ぶことができます。

また納付書については、税務署でもらうことができます。

なお贈与税や相続税の申告は専門性が非常に高く特殊なため、贈与の内容が複雑な場合や贈与額が多い場合には、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

申告書の提出先

贈与税の申告書は、贈与を受けた人の住所地の所轄税務署長へ提出します。

贈与税の申告方法

まとめ

贈与税には基礎控除があるため、年間110万円以内の贈与であれば申告や納税の必要はありません。ただしそれを超える金額であれば、期限内に申告及び納税を済ませなければなりません。

贈与税の申告漏れは結局のところ税務署に見つかってしまう可能性が極めて高いため、たとえ少額であっても期限内の申告をおすすめします。

贈与税の申告書類をご自身で作成するのが難しいと感じた場合でも、税理士などの専門家に依頼すれば問題なく期限内の申告を済ませることができます。

必ず期限内の申告と納付を済ませるようにしましょう。