souzoku-station

家族が亡くなり相続が発生すると、相続財産の分け方について話し合う遺産分割協議を行います。ここで全てが決まればあとは事務的な手続きを行うだけで済みますが、そうならない場合もあります。

どの財産を誰が受け取るかを巡り、話し合いでは解決できなくなった場合には、遺産分割調停を行います。

遺産分割調停は、相続人同士ではなく専門家に間に入ってもらうことによって、相続をめぐる争い事を解消してもらうのが狙いです。

今回は、遺産分割協議で解決できない場合に行なう遺産分割調停について解説していきます。

遺産分割調停とは

遺産分割調停とは、裁判所から選出された調停委員の仲介により当事者同士の円滑な解決を目指すために設けられている制度です。

調停委員は誰がなるの?

調停委員の選考は各裁判所が行い、最終的な任命は最高裁判所によって行われます。その選定基準はおもに3つあります。

  • 弁護士の資格を有する者
  • 民事か家事の紛争に対して有用な専門知識を有する者
  • 社会生活の上で豊富な知識経験を有する者

のいずれかとされています。

遺産分割調停はどこで行われるの?

遺産分割調停は、調停相手の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者間で合意した家庭裁判所内で行われます。

遺産分割調停はどのような時に行なわれるの?

遺産分割調停が行われる場合として最も多いのが、法定相続分が相続できない場合の調停です。例えば、遺言状もないのに長男が全ての財産を相続しようとしている場合などがそうです。

これ以外に遺産分割調停が行われるおもな理由は、以下の3つに分類することができます。

  • 遺留分の侵害・・・遺言書が法定相続人の遺留分まで侵害している場合
  • 寄与分の認定・・・生前被相続人に対して仕事や生活面での面倒を見ていたことに対する、経済的に特別な配慮を受けたい場合
  • 特別受益・・・一部の相続人だけが生前被相続人から贈与を受けていた場合、それを考慮に入れず残された財産だけを分割すると不公平が生じます。そのような場合に特別受益を認定してもらいます。

遺産分割調停は誰が申し立てるのか?

遺産分割調停は、相続人のうちの一人だけでも申し立てることができます。もちろん全員で行うこともできます。

遺産分割調停の効力はどれくらい?

遺産分割調停が成立すると、調停調書を作成します。この調停調書は裁判所の判決と同等の効果を有しており、調停条項に従わない人がいれば最終的に強制執行をすることもできます。

遺産分割調停について

遺産分割調停にかかる一般的な期間

次に、遺産分割調停の流れと調停終了までの一般的な期間を見てみましょう。

遺産分割調停の流れ

一般的な遺産分割調停は、以下のような流れで行われます。

  1. (相続人の誰かが)家庭裁判所に調停を申し立てる
  2. 調停日が定められ、相手方に申立書と呼出状が送られる
  3. 日程の都合が合わない場合、再度日程の調整を行う
  4. 調停委員と調停を行う
  5. 1~2ヶ月に1回(1回あたり1~2時間程度)の頻度で調停が行われる
  6. 双方で合意した場合、裁判官が出席し当事者と調停委員の全員で調停条項を確認し、調停が成立する
  7. 後日、調停条項が記載された調停調書が郵送され、遺産分割調停が終了

調停で行われること

なお調停では、具体的に以下のような流れで行われます。

  1. 相続人の確定
  2. 遺言書の有無と内容の確認
  3. 相続財産の確定
  4. 相続財産の評価額確定
  5. 特別受益や寄与分の確定
  6. 各相続人の相続財産額の確定
  7. 相続財産の分割方法の確定

調停に欠席した場合

調停日には相続人の全員が出席することが求められています。正当な理由がなく欠席した場合には、過料などを支払わなければならなくなります。

また調停日に欠席者がいる場合には調停は成立せず、その後も当該当事者の出席が期待できないような場合には調停は不成立で終了し、審判に移行することになります。

調停までの期間と調停回数

調停は最低でも4~6回程度行われます。最終的に調停が終了するまでには1年~1年半ほどの期間が必要となります。

遺産分割調停の流れ

遺産分割調停に必要な書類と費用

次に、実際に家庭裁判所に対して遺産分割調停の申し立てを行う場合に必要な書類についてみていきましょう。

必要書類その①遺産分割調停申立書

申立人や訴える相手の被相続人の氏名、申し立ての趣旨や申し立ての理由などを記載します。

必要書類その②土地遺産目録

相続財産に土地が含まれている場合に作成します。「所在」「地番」「地目」「地積」などを記載します。

必要書類その③建物遺産目録

相続財産に建物が含まれている場合に作成します。「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」などを記載します。

必要書類その④現金・預貯金・株式等遺産目録

相続財産に現金・預貯金・株式などが含まれている場合に作成します。「品目」「単位」「数量(金額)」などを記載します。

必要書類その⑤当事者目録

申立人(もしくは相手方)の住所や氏名、生年月日および被相続人との関係を記載します。

必要書類その⑥その他添付資料

状況に応じてこれら以外に添付資料の添付を求められる場合があります。なお①から⑤までの書式は、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

遺産分割調停に必要な費用

遺産分割調停に必要な費用は以下の2つとなります。

  • 被相続人1人につき1200円分の収入印紙
  • 裁判所からの送られてくる郵便物の郵便切手代

遺産分割調停でまとまらなければ遺産分割審判

遺産分割調停では、相手方の相続人を強制的に出席させることはできません。仮に相手方の相続人が調停を欠席したとしても、調停結果がその相続人にとって不利になることはなく、その場合は調停が不成立となり、遺産分割審判に移行します。

遺産分割審判の開始

遺産分割調停が不成立に終わると、遺産分割調停が審判移行したことと、その担当及び審判の期日の呼出状が家庭裁判所から郵送されてきます。指定された審判の期日に家庭裁判所において、遺産分割審判が始まります。

遺産分割審判について

遺産分割審判は遺産分割調停とは異なり、話し合いにより手続きを進めることはありません。それぞれの主張を書面にまとめ、内容が正しいことを証明するための証拠を提出し、法律的な正しさを主張し合います。

遺産分割審判の期間と回数

遺産分割審判に期日や回数はありません。遺産分割調停のように、だいたいの回数や期間の相場もありません。それぞれの相続人の主張内容や争点が整理できるまで何度でも遺産分割審判が開かれます。

遺産分割調停が長引いた結果、遺産分割審判に移行し、その後の遺産分割審判も長期化した場合、全部で3年以上かかる場合もあります。

遺産分割審判に不服がある場合は即時抗告

遺産分割審判の決定内容に不服がある場合には、告知を受けた日から2週間以内に即時抗告を行います。即時抗告は審判を下した家庭裁判所に対して高等裁判所宛の即時抗告申立書を提出することによって行います。

高等裁判所では、抗告を棄却するか、原裁判所(家庭裁判所)に差し戻して審理させるか、原判決を破棄して自ら決定を下します。

遺産分割調停と遺産分割審判

まとめ

相続財産には土地や建物など分割しにくいものが多く含まれており、それ以外にも被相続人に対する生前の寄与分や、被相続人から受けた特別受益などがある場合があります。複雑な状況下では、遺産分割協議で公平に遺産を分けることが困難になることも珍しくありません。

相続財産の分割を巡り、不公平を是正するための制度として遺産分割調停が設けられています。

調停自体は少ない費用で行うことができますが、民法や相続税などの税法の専門的な知識が必要となるため、まずは弁護士や税理士などの専門家に一度相談することをおすすめします。