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現金預金や株式、土地や建物を相続すると相続税がかかることはご存知だと思いますが、亡くなった方が趣味で使っていた高級カメラやレンズを相続しても相続税がかかることはご存知でしょうか?実は、高級カメラやレンズだけでなく、家具や家電なども、家庭用財産として相続税の対象になるのです。

そこで本記事では、高級カメラやレンズなどを含む家庭用財産について、その評価方法や相続時にどう取り扱うべきかなどを解説します。

カメラやレンズは家庭用財産

冒頭で述べたように、カメラやレンズは家庭用財産として相続税の課税対象となります。では、「家庭用財産」とはどのようなものなのでしょうか?

家庭用財産とは

家庭用財産とは、家具や家電、衣服や楽器など、家にある一般動産の総称です。土地やその定着物(建物など)以外の現金や商品、家財のように形を変えずに移転できる「動産」のうち、家財道具に含まれる一切を「家庭用財産」といいます。

家財道具の大半は、多くの場合引き取ってもらうにもお金が必要な家具や衣服などが占めていますが、中には生前趣味で集めた高価なものが含まれている場合があります。たとえば、高値で取引されているトレーディングカードやワイン、そして高級カメラやレンズなどです。

このように、下取りに出せば換金できそうなものや、実際に高価な値段で売買されているようなものは、家庭用財産として相続税の課税対象になります。

家具

家庭用財産の評価単位

相続財産の評価は、基本的に、1つ1つの財産ごとに評価して相続税の申告書に記載していきます。ですが、布団の1枚や使いかけのシャンプーまでそのような評価をしていたら、10ヶ月の申告期限内に申告書を作ることはできません。

そこで、財産評価基本通達128では、一般動産の評価単位を以下のように定めています。

「動産の価額は、原則として、1個又は1組ごとに評価する。ただし、家庭用動産、農耕用動産、旅館用動産等で1個又は1組の価額が5万円以下のものについては、それぞれ一括して一世帯、一農家、一旅館等ごとに評価することができる。」(引用元:国税庁ホームページ「第6章動産第1節一般動産」より)

つまり、原則としては1個(もしくは1組)ずつ個別に評価していくのだけれど、5万円以下のものに関しては「家財道具一式」としてまとめて評価して良いよ、と言っているわけです。

では、高級カメラやレンズはどうでしょうか?1個(もしくは1組)で5万円を超えるものなど、いくらでもありますよね。カメラやレンズだけでなく、時計やワインもそうです。中古でも、5万円をゆうに超える価格で流通しています。したがって、高級カメラやレンズは「家財一式」としてまとめて評価せず、他の家財道具とは分けて個別に評価しなければなりません。

ライカやハッセルブラッド等、高級カメラの査定方法

ライカやハッセルブラッドのような高級カメラは、先程述べたように他の家庭用財産とは分けて、1つ(もしくは1組)ずつ個別に評価しなければなりません。では、具体的にどのような方法で評価すれば良いのでしょうか?

高級カメラ

家庭用財産の評価方法

財産評価基本通達129では、一般動産の評価方法を以下のように述べています。

「一般動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する。」(引用元:国税庁ホームページ「第6章動産第1節一般動産」より)

つまり、原則としては、売買の実例価格や精通者(鑑定士など)が鑑定した価格などで評価するのだけど、それが難しい場合は相続開始時の未償却残高で評価するよ、と言っているわけですね。

では、この3つの評価方法をもう少し詳しく見てみましょう。

売買実例価格

売買実例価額とは、実際に売買されている価額のことをいいます。たとえば相続財産の中に1つ5万円を超える洗濯機がある場合は、その中古洗濯機を売却した場合の価格が売買実例価格となります。

精通者意見価格

精通者意見価格とは、その商品に精通している専門家による鑑定で算定された価格のことです。美術品や骨董品などであれば、古美術商などに鑑定を依頼し、その結果をもって美術品や骨とう品などの相続税評価額とします。

また、高級カメラやレンズであれば、こうした商品を取り扱っている店の査定などが評価額となります。

小売価格からの償却費の額の合計を控除した金額

売買実例価格や精通者意見価格での評価が難しい場合は、小売価格からの償却費の額の合計を控除した金額を評価額とします。

税法では、取得価額が10万円以上の資産は一気にすべてを費用として計上せず、国が定めた耐用年数に基づき、毎年少しずつ費用として計上します。たとえば、乗用車であれば耐用年数が6年と定められているため、6年かけて少しずつ費用に計上して帳簿上の価値を0に近づけていきます。

こうした方法により、購入した価格をベースに経過年数分の減価償却費を控除し、算出された金額を評価額とするわけです。

家庭用財産のチェックリストを作ろう

チェックリスト

最後に、家庭用財産のチェックリストの作成と財産ごとの評価方法について簡単に解説します。家庭用財産は、おおむね以下の7つに分類できます。

1.家電

パソコンや掃除機などの家電は、ほとんどの場合減価償却などにより5万円以下の評価額となるため、個別に評価せず「家財道具一式」として他の財産と合算した価格を評価額とします。ただし、亡くなる直前に購入した5万円を超える家電に関しては、個別に評価しなければなりません。

2.家具

ソファーやベッドなどの家具も、家電と同様に評価します。大半は減価償却などによって5万円以下の評価額となるでしょうが、一部の高級家具や亡くなる直前に5万円を超える値段で購入した家具に関しては、個別に評価しなければなりません。

3.衣類

洋服や靴、鞄なども、5万円を超える高級なものは業者の買い取り価格などを参考に個別に評価し、それ以外はまとめて一括で評価を行います。

4.自動車

自動車は、中古市場の業者の買い取り価格や、査定額等を確認したうえで、それらの金額を自動車の評価額とします。

5.カメラ、レンズや貴金属品

基本的に、高級カメラやレンズ、貴金属品などは実際の売却価格や買取業者などの査定金額を参考に、個別に評価します。ただし、上述のように1個5万円以下のものであれば、「家財道具一式」の中にまとめて計上します。

6.書画骨董

簡単に価値が判定できない美術品や書画などは、自動車のように実際の売却価格や買取業者の査定価格で評価するのは難しいでしょう。したがって、美術商などに依頼して得られた鑑定額を参考に個別に評価をしていくのが良いでしょう。特に、亡くなった方が熱心な収集家であった場合は、必ず専門家に鑑定を依頼することをお勧めします。

7.電話加入権

電話加入権の相続税評価額はこれまで1本あたり1,500円で個別に評価していましたが、令和3年1月1日以降に発生した相続については、家庭用財産としてまとめて評価することになりました。

まとめ

「相続財産」というと、ついつい現金預金や土地建物ばかりに目が行きがちですが、相続税を申告する際には、身の回りにある家財道具も相続財産に含めなければなりません。特に、高級カメラやレンズのように1個(1組)の評価額が5万円を超えるものは、個別に評価して必ず計上するようにしましょう。

ただし、どれを個別に評価し、どれならまとめて評価できるのかを判断するのは難しいため、疑問に思うことがある場合は税理士などの専門家に相談することをお勧めします。