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現金預金や有価証券、自動車や土地などが相続税の課税対象になることはご存知だと思いますが、例えば相続人の間で形見分けするようなものはどうでしょうか?

亡くなった人の手紙や写真、生前気に入って使っていた小物などであれば相続税の対象にはなりませんが、宝石のような貴金属類はどうでしょうか?

実は宝石などの貴金属類は相続財産となり、相続税の課税対象となります。また宝石以外にも腕時計、ワイン、切手などのコレクションも全て宝石と同じ扱いとなります。

そこで本日は、宝石にかかる相続税について、評価方法などを中心に徹底解説します。

宝石にも相続税がかかる?

そもそも相続税がかかる相続財産は、どのように定義されているのでしょうか?国税庁はホームページ上で、以下のように述べています。

「相続税は原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈(死因贈与を含みます。)によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。この場合の財産とは、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものをいいます。(引用元:「No.4105 相続税がかかる財産」国税庁HPより)」

上記のとおり、相続財産として「宝石」もしっかり明記されています。また、それ以外にも以下のようなものも「みなし相続財産」として相続税の対象になります。

  • 相続や遺贈によって取得したものとみなされる財産・・・死亡退職金や被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金など
  • 被相続人から死亡前3年以内に贈与により取得した財産・・・被相続人の死亡前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産
  • 相続時精算課税の適用を受ける贈与財産・・・被相続人から、生前、相続時精算課税の適用を受けて贈与された財産

つまり、亡くなった人の手紙や写真といった、ほかの人にとって金銭価値がなく換金性がないもの以外はすべて相続財産として計上しなければなりません。

宝石にかかる相続税額

次に、実際にどれくらいの相続税が宝石にかかるのかを調べてみましょう。そのためにはまず相続税の基礎控除を計算しなければなりません。相続税の基礎控除は以下の計算式によって算出することができます。

相続税の基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続財産の総額から基礎控除を引き、以下の表から具体的な税額を計算します。

平成27年1月1日以後の場合】相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

例えば相続財産が宝石のみで、宝石の相続税評価額が1億円、法定相続人が2名の場合の相続税は以下のように計算します。

相続税の基礎控除=3,000万円+(600万円×2名)=4,200万円
1億円-4,200万円=5,800万円
相続税=5,800万円×30%-700万円=1,040万円
宝石の相続について

宝石の価格帯別にみる考え方

では次に、価格別に宝石の扱い方の違いについて詳しくみていきましょう。

高額な宝石の扱い方

基本的に高価な宝石の場合は、一つずつその価格を評価していきます。高価か高価でないかの目安には明確な基準はありませんが、一般的には5万円を以上の宝石は高額とみなし、一つずつ個別に計上していきます。

少額な宝石の扱い方

一方、一つあたりの評価額が5万円を下回る宝石に関しては、個別ではなくまとめて「宝石一式」として相続財産に計上していきます。

宝石の相続税評価方法について

では次に、宝石の評価方法をどのように行うのかを具体的に見てみましょう。宝石も含めた一般動産の評価方法は、相続財産の評価方法に関する「財産評価基本通達」には以下のように書かれています。

一般動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。

つまり購入した時の購入価格ではなく、同じ種類の宝石の現在の取引価格や専門家(=精通者)の鑑定価格(=意見価格等)に基づいて評価するわけです。

評価方法その① 宝石の専門家に鑑定してもらう

宝石鑑定の専門家である宝石鑑定士に宝石を鑑定してもらいます。1万円弱の宝石鑑定料は必要になりますが、一番間違いのない確実な方法です。

評価方法その② 宝石購入店に問い合わせてみる

宝石を購入した店に問い合わせてみましょう。宝石を売っている店舗は宝石の買い取りも行っている場合も多いです。また、宝石鑑定士が所属していることもあります。

ただし有料で宝石の鑑定をしてもらうのでなければ、下取り価格を提示されることもあるので注意しましょう。

宝石の相続税評価額はその宝石の現在の取引価格であり下取り価格ではないため、下取り価格を宝石の評価額にしてしまうと相続税評価額が実際よりも低い価格となってしまいます。

後日、相続税の調査が行われた際にはその点を指摘され、修正申告をしなければならなくなってしまうリスクもあるため気をつけましょう。

評価方法その③ 実際の売却価格を用いる

相続開始後に宝石を売却してしまった場合は、その売却価格を宝石の評価額とします。

形見分けとして身に着けておきたい宝石でなければ、に売却してしまった方が実際の鑑定価格よりも売却価格の方が安くなるため、相続税評価額も下がります。

宝石の相続と評価額

宝石を相続財産から除外しても税務署には見つからない?

宝石は自動車や土地などの不動産とは違い、所有者を登録することはありません。

「だったら相続財産から除外しても税務署にバレないのではないか?」と考えてしまいそうですが、実際はそんなに甘くはありません。

高価な宝石を相続財産から除外してしまった場合

数百万円から数千万円の宝石の宝石を相続財産から除外した場合、まず税務署にバレると考えて間違いありません。

高額な宝石であれば、現金で購入することはまず考えられません。振り込みであれクレジットカードでの支払いであれ、宝石購入時の痕跡は必ず通帳に残ります。

そのため被相続人の通帳をさかのぼってチェックしていけば、必ず見つかってしまいます。

また、税務署は被相続人の所有財産の額をかなり正確に把握しています。宝石を相続財産から除外して申告した場合、税務署側が把握している財産よりも少ないことにより、申告漏れ・財産隠しとみなされる可能性が高いです。

高額な宝石を現金で購入した場合でも税務署に捕捉される

個人事業主や会社経営者であれば何年かに1度税務調査を受けることになりますが、会社員であっても年収が500万円を超えると、源泉徴収票は市区町村役場以外に税務署へも会社から郵送されることになります。

サラリーマンやOLであっても年収が500万円以上の人であれば税務署に年収を捕捉されているため、どの程度の財産を残せるのか税務署側が細かく把握することができます。

仮に現金で高額な宝石を購入して相続財産を減らしたとしても、すぐに税務署に見つかってしまうので注意しましょう。

高額な宝石であれば夫婦間でも贈与税の対象となる

例えば婚姻生活の節目に結婚相手に高額な宝石をプレゼントした場合、贈与税の対象となることがあります。

たとえ夫婦間であっても110万円を超える宝石をプレゼントした場合には、厳密に言えばそれらは全て贈与税の課税対象となります。
宝石の相続と贈与税

まとめ

亡くなった人の宝石や時計を形見分けとしてもらうことはよくありますが、それらは厳密に言えば相続財産として相続税の課税対象になります。

特に宝石などの高額なものであれば、税務署は購入履歴を簡単に捕捉することができます。

宝石を相続した場合の正しい相続税申告方法を守り、相続税の申告漏れや評価額を下げての申告とみなされないようにしましょう。まずは相続に強い税理士に相談することをおすすめします。