相続財産にはさまざまなものがあります。分割しにくい相続財産の中でも、特に相続時に問題になることが多いのが土地です。
土地は絵画や自動車と比べて財産価値が高いだけでなく、細かく分割するためには様々な費用が必要となります。
そのため土地を分割する場合には状況に応じた分割方法を選択しなければ、相続を円滑に行うのが難しくなってしまいます。
今回は相続した土地を分割する方法と、相続人間でもめないためのポイントについて詳しく解説していきます。
土地を相続した場合分割が難しい
冒頭でお話ししたように、土地を相続する場合、相続人同士で安易に分割しようとすると問題が生じてしまいます。その理由には以下の2つが挙げられます。
評価額通りに土地を分割できないため
例えば300万円の現金を3人の相続人で均等に分けた場合、一人当たりの相続財産はぴったり100万円です。では300万円の土地を3人で分けた場合には、どうなるでしょうか?
相続税評価額としては100万円の土地となりますが、実際に100万円の価値の土地になることは難しいでしょう。なぜなら土地は、一般的に分割すればするほど価値が減少してしまうからです。
また、分割することにより土地の形が悪くなると利用用途が限られてしまうため、さらに価値が減少する場合もあります。
このように土地を相続した場合、評価額通りに土地をそのまま等分することは難しいと言えます。
心情的な理由で難しいため
生まれ育った生家や両親が暮らしていた家などには、経済的な価値以上とは別に思い入れがあることが多いです。
思い入れのある土地を分割する・売ることに抵抗のある相続人と、土地を分割したい・土地を売りたいと考える相続人がいる場合、どうしても揉める原因になってしまいます。
これらの理由により土地を相続した場合、分割するのが難しいといわれています。土地の分割を考える場合、そのメリット・デメリットを知った上で正しく分割することが大切になってきます。
土地を分割する4つの方法と各メリット・デメリット
相続した土地を分割する場合、具体的には4つの方法が考えられます。土地分割の方法と各メリット・デメリットをみていきましょう。
分割方法その① 現物分割
現物分割とは、相続財産を土地と土地以外とに分け、土地を相続人一人だけが相続する方法です。例えば現物分割を行う場合、長男が1,000万円の土地を相続し、次男は現金などの土地以外の財産を1,000万円相続します。
現物分割のメリット
現物分割のメリットは、何といっても土地を分割しなくて良いところにあります。先祖代々受け継いできた土地や現在居住している人がいる土地を分割するのは大変難しいですが、現物分割であればそういった点を全てクリアすることができます。
現物分割のデメリット
土地以外の分割可能な相続財産(現金預金など)が土地の評価額以上になければ、公平に財産を分割することができなくなります。例えば土地の評価額が8,000万円・そのほかの財産の評価額が4,000万円の場合、土地を相続した人が4,000万円分ほか財産分を上回る形となります。
特定の相続人が多く相続する不平等な状態となると、相続人間で揉める原因となってしまいます。
分割方法その② 代償分割
現物分割が難しい場合、相続財産を公平に分割するために差額分を一方の相続人がほかの相続人に現金などで支払うことをいいます。
例えば相続財産が1,000万円の家と土地だけだった場合、長男がそれを全て相続し、その代わり長男が次男に対して500万円の現金を支払います。
代償分割のメリット
代償分割の場合、土地を分割しないでそのまま残すことができるため、相続財産の分割を公平に行うことができます。
代償分割のデメリット
土地を相続した相続人に余剰資金がない場合、代償分割を行うことができません。仮に余剰資金があったとしても家を相続した結果、余剰資金の大半を吐き出してしまう場合もあります。
分割方法その③ 換価分割
換価分割とは、土地のように分割できない相続財産を売却して現金に換え、それを相続人同士で分けることを言います。
換価分割のメリット
換価分割を行うと家や土地が現金に変わるため、相続財産を公平に分割することが可能になります。また、土地そのものがなくなるため、管理に必要な固定資産税などを支払う必要もなくなります。
換価分割のデメリット
換価分割を行う場合、土地や家を手放すことになります。また、売却時に利益が出た場合には譲渡所得税を支払う必要があります。
分割方法その④ 共有
相続人で土地を共同名義にすることを「共有」と言います。共有の場合は土地を分けずに、相続人の数で分けた持ち分同士を共有し合うことになります。
例えば相続人が2名であれば、土地をお互い2分の1の持ち分で共有することになります。
共有のメリット
共有の場合、土地や家を売却することなく公平に分けることが出来ます。また代償分割のように現金を用意する必要もありません。
共有のデメリット
土地や建物が共同名義となるため、その後の土地の活用を巡って相続人の間で意見が対立した場合、思い通りにすることが難しくなります。
また、次の相続が発生した場合、権利関係が複雑になるため、揉めごとの種を作る可能性があります。
土地を相続する時に揉めないためのポイント
土地を相続する場合の分割方法について確認しました。どの方法にもメリットとデメリットがあるため、揉めごとを作らないためには状況に応じた分割方法を選ぶ必要があります。
ここでは、具体的にどのようなケースでどの分割方法を選ぶと良いかみてきましょう。
ケース1.相続人に現金が必要な場合
相続人全員が土地や家を残すより現金を必要とするのであれば、換価分割をおすすめします。換価分割であれば土地や家を現金化するため、相続財産を公平に分けることができます。
ケース2.長男など相続人一人だけが土地を相続する場合
土地以外にも現金などの財産があるのであれば、現物分割が良いでしょう。土地以外の部分を相続人同士で平等に分けることで、揉めごとを避けることができます。
ケース3.土地以外の相続財産が少ない場合(かつ土地を一人だけに相続させたい場合)
相続財産の大部分が土地や家の場合、現物分割を行うと相続人の間で不公平が起こってしまいます。
現物分割によって相続人同士で揉めないためにも、不公平分を現金で補う代償分割をおすすめします。
ケース4.遺産の分割方法で揉めてしまいうまくいかない時
どうしても遺産の分割方法で揉めてしまう場合や、土地や建物を手放したくはないが誰の名義にするか決まらない場合は、共有を選択すると良いでしょう。
代償分割のために生命保険に加入しておくのもおすすめ
不動産をある特定の相続人が相続し、それ以外の人は現金を相続する代償分割は揉めごとを起こさない最適な分割方法ではありますが、現金を用意することができない場合も多くあります。
そのため、例えば家業を継ぐなど土地や建物を誰が相続するか相続発生以前から決まっているのであれば、生命保険の活用をおすすめします。
被相続人を被保険者とする生命保険に加入しておけば、亡くなった後の代償分割で支払う現金を保険金で充てることができます。
まとめ
現金とは異なり、土地や建物はその性質上分割することが難しいため、相続財産に土地や建物がある場合には注意が必要です。
土地の分割方法には4つの方法がありますが、相続の方針や相続人の状況に応じた方法を選択しなければ、望むような土地の分割が難しいばかりではなく揉めごとの火種を作ってしまいます。
また、実際にどの分割方法が適しているかを判断するには一定の法律知識が必要となるため、税理士や弁護士などの専門家に相談しながら相続財産の分割を進めていくことをおすすめします。